上の写真のブドウは、栃木県、足利市のココ・ファーム・ワイナリーで育てられている「ノートン」いう、アメリカ・バージニア州の品種です。
ヨーロッパからの移民の人たちがアメリカ・東海岸の高温多湿な環境で上質なワインを造っていた事にヒントを得てノートンが選ばれのだそう。
ココ・ファーム・ワイナリーでワイン造りを見学
ココ・ファーム・ワイナリーへは何度か来ていて、見学にも3回参加しました。
約45分(1人500円)の間に、施設を回りながら、いろいろな話しを聞かせてもらえます。
ワインに使われるブドウは糖度20度以上で、食用のブドウよりもかなり糖度が高いのだそうです。
意外ですね。
酸味も強いので、ブドウ自体を食べてみても、糖度の高さ(甘さ)は感じにくいのだとか。
見学では、こうしたブドウの話しに始まり、このワイナリーの成り立ちについての説明もあります。
教育の場としてのブドウ畑
1950年代、教師だった川田昇さんがこの土地を取得して、「特殊学級」の教え子たちの教育の場として開墾したのが始まり。
「知的障害を持つ人たちが作る」という方針は、今もこのワイナリーを特徴づけていて、むしろ新しさが増しているような、そんな感想を持ちます。
食用ブドウからスタート、後にワイン造りに
斜度38度という急斜面に作られたブドウ畑は、元々ブドウを想定していたのではなく、川田さんの当時の資金では、このような(条件の悪い)土地しか手に入れらなかったから。
しかし、南西向きで日当たりが良く、水はけの良い斜面は、結果的にブドウの栽培に適していました。
食用のブドウからスタートし、後にワイン造りに挑戦するようになるのですが、まだまだ日本では情報が少ない時代。
手探りでのワイン造りは大変だったろうと想像します。
上記の「ノートン」も、日本の気候に合う品種の試行錯誤の末だったでしょう。
九州・沖縄サミットやJAL国際線ファーストクラスで採用
2000年、田崎真也さんによって「九州・沖縄サミット」の晩餐会に、そしてJAL国際線ファーストクラスのワインに採用されたり、世間一般では大成功と言える現状はしかし、ココ・ファームにとっては副次的なものだったのかも知れません。
開墾以来、50年以上に渡ってブドウ畑に除草剤を使った事がない、その理由は「子ども達の仕事(草刈りにかける時間)が減ってしまうから」。
同じ理由で、発泡ワインのルミュアージュ(瓶内2次発酵の澱を下げる作業)も機械化せず、手作業。
野生酵母(天然の自然酵母)を使うこだわりは、均質化と対局にある個性、子ども達の個性を尊重する事と同義。
細部に渡る、眼差しの暖かさと合わさった成果。
利益の追求や効率化とは別の基準で判断してきた結果としての成果に対して、尊敬の念と共に、新しさを感じます。
あえて機械化しない、手作業のルミュアージュ
見学の最後では、盲目の修道士が発見した、シャンパンについての話しがありました。目が見えなかったからこそ、気づいた美味しさ。
経済効率や発展に突き進むスピードに置き去りにされる人、「負け組」を作らない社会。
誰もが望む社会です。
しかし、それをどうやって実現するのか、答えを持っている人は少ないはずです。
「慈善で買ってもらうのではなく、美味しさで買ってもらう」、川田さんの言葉だそうですが、まさにその通りなのでしょう。
古くて新しいテロワール
その土地ならではのテロワール。
ブドウという植物と、メソポタミアから古代ローマ、現代へと続く人類とワインの歴史を想う時、ブドウが持つ本質的な形質を僕たちは変える事ができない事、つまりはブドウの形質を活かす事が最善だと知ります。
気候や土壌、料理、風景、関わる人、あらゆるものと共に味わう、古くて新しいテロワールについて、考えさせられます。
植物名 | ヨーロッパブドウ |
漢字名 | ヨーロッパ葡萄 |
別名 | |
学名 | Vitis vinifera |
英名 | European grape、Wine grape |
科名・属名 | ブドウ科ブドウ属 |
原産地 | 西アジア |
花期 | 5~6月 |
ココ・ファーム・ワイナリー
〒326-0061
栃木県足利市田島町611
Tel. 0284-42-1194
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