田舎で使うエコ洗剤

夏のカラマツ林
夏のカラマツ林。濃い緑色と空のコントラストが強い、信州の高原の短い夏です。

以前の記事『田舎で考える洗剤あれこれ』の続きです。

下水処理環境が整っていない田舎こそ、排水には気を配るべき、という事を既に書きましたが、ではどうするのか。

現時点での僕なりのレポートを書きたいと思います。

都市部の洗剤はエコでオシャレに

ecostore(エコストア)、後ろはecover(エコベール)
ecostore(エコストア)はニュージーランド、後ろのecover(エコベール)はベルギーの洗剤メーカーです。

都市部では、「エコ」とアピールしている商品がたくさん店頭に並んでいて、むしろ「エコ洗剤」がオシャレで、流行になっているような状況もあります。

量り売りの洗剤もあって、とても進んでいます。

それが田舎になると、いわゆる「普通」の洗剤が多くなります。

特に「エコ」とか強調されていない商品群の中から選ぶ事になりますが、裏側の「成分」を見ても、専門用語が多くてどれを選ぶべきか、よくわかりません。

そこで、インターネットで調べるわけですが、情報が錯そうしている印象です。

「石けんvs合成洗剤」という構図があるようで、石けん派による「合成=悪」という発信も目立ちます。

ところが、本を読んだり、専門家の意見を聞くと、石けんを使っていれば全く問題ない、というわけではないし、合成洗剤にも石けんにも良いものとそうでないもの(環境に特別に配慮したものと、そうではない「普通」のもの)がある事がわかります。

そんなわけで、まず、僕が考える田舎暮らし(山暮らし)での洗剤選びの条件は下記です。

山暮らしでの洗剤選びの条件(我が家の場合)

雨のカラマツ林
我が家はカラマツ林の中にあります。
山暮らしでの洗剤選びの条件(我が家の場合)

●生分解性
●ライフサイクルアセスメント(LCA)
●それぞれの環境を考えた選択(洗濯)

生分解性

生分解性というのは、微生物の働きによって物質が水と二酸化炭素になる(分解する)性質、という事です。

1960年代、ABS洗剤と呼ばれる洗剤が使われ、生分解されずに河川の汚染を引き起こしたという過去があります。

今では、洗剤の成分が改良され(都市部では下水処理能力も高まり)、当時のような心配はなさそうですが、田舎暮らしをしている身としては、少しでも生分解性が高いものを選びたいです。

その際「最終分解率」「初期の分解速度」が指標になりますが、気を付ける成分があるとすれば「蛍光増白剤」です。

蛍光増白剤は、多くの洗剤に入っていますが、分解速度が遅いようなので、使わない事にしようと思います。

衣類を「白くする」のは、諦めて(?)、白くする必要がない服を選ぶ、という判断です。

ライフサイクルアセスメント(LCA)

次に、「ライフサイクルアセスメント」。

Life Cycle Assessmentの略で、LCAとも表記されますが、これは製品やサービスに対する環境影響評価の手法の事です。

製造から販売、使用、廃棄、再利用まで、トータルな環境負荷という、洗剤についても重要な考えです。

過去の環境汚染では、個人の安全性、魚毒性が主な問題点になっていましたが、現在では環境問題はもっと複雑化しています。

生分解性が高い(環境に優しい)洗剤でも、その製造の為に大量のヤシの木が伐採されていたりすれば負い目を感じるし、巡り巡って自分の周りの環境悪化に繋がります。

そもそも、洗濯回数を減らす事ができれば、使用する水や界面活性剤の量を減らせるし、関連するCO₂排出量を削減できたりします。

石けんの生分解性が高いとはいえ、原材料の油脂を大量に使ったり、すすぎの回数が多い製品であれば、LCAの観点からは減点でしょう。

それぞれの環境を考えた選択(洗濯)

最後に「それぞれの環境を考えた選択」というのは、例えば我が家の場合、冬季は気温がマイナス15℃くらいになります。

水道は凍結しやすいし、ガスはプロパンなので、ぬるま湯を作るのにも貴重な燃料を使う事になります。

石けんを使うと、金属石けん(石けんかす)が沈着し、洗濯機や排水管の掃除の頻度も上がるので、LCAとしてもマイナスだと考えます。

つまり、「石けんではない」、高性能な(環境に優しい)合成洗剤が、我が家には適当だと考えています。

もし、田舎に移住せず、そのまま神戸に住んでいたとしたなら、下水処理プラントもしっかりしているので(国内の他の都市もそうです)、あまり洗剤に気を使わない(必要がない)と思います。

蛍光増白剤を使っても問題ないようです。

しかし、それぞれの環境で「考える」のは大事な事だし、楽しい作業でもあります。

田舎で使う洗剤とは

雪のカラマツ林
雪のカラマツ林。信州の高原では、冬場はマイナス15℃くらいになるので、寒冷地でも使いやすい洗剤が必要です。

ここまで書いてきてなんなのですが、正直な感想としては、国内で普通に売られている洗剤(家庭用洗剤)を普通に、正しく使う限りにおいては、問題ないように思います。

ただ、大事な事は「考える」という、関心を示した結果の判断、生活だと思うのです。

例えば牛乳を、魚が住む水辺にそのまま流したとしたら、魚が住める環境に戻すには流した牛乳の1万5000倍の量の水で薄める必要があります(牛乳には天然の界面活性剤が含まれています)。

今回は洗濯洗剤を軸に書いてきましたが、他にもシャンプーやリンス、ボディーソープ、掃除用洗剤など、排水管から流すのは、あらゆる種類の界面活性剤、合成物です。

成分表示は管轄する省庁によって違うので、それぞれに覚えて選ぶ必要があります。

牛乳などの飲料や食べ残しも排水管に流される可能性がありますが、それらの成分は水質汚濁を想定していません。

適切に合併浄化槽が設置されていれば良いですが、そうではない家庭もあるでしょう。

また、農薬や除草剤は排水管を通りません。

一つひとつ覚えるのを面倒と感じるか、少しずつ改善して、学んでいく事を楽しいと感じるか。

成分よりもヒトの意識(?)

ヤマモミジの翼果
赤いハンガーが並んでいるように見える、ヤマモミジの翼果。雨の森で見つけた、洗濯のイメージです(笑)。

つまり、田舎で使う洗剤とは、成分よりもヒトの意識がポイントになるはずで、良くも悪くも田舎は重要な「市民」になり得ると思うのです。

環境先進国・ドイツのように、市民からの底上げで法律が整えられたという、自然に近い生活だからこそ生まれる意識、市民になる事ができるのではないかと。

次回以降にまとめます。

※下記は参考にした本です。

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ABOUT US
しょうじ(Shoji)
神戸出身、2016年に信州の山奥に移住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。