シングルオリジンコーヒーの物語(3)イタリアのわがままなコーヒー

ヌォーバ ポイントのエスプレッソカップ
イタリアのコーヒー文化は「わがままな注文」によってできています。

以前の記事『シングルオリジンコーヒーの物語(2)コーヒーと多国籍企業』の続きです。

コーヒー農家の困窮について、多国籍企業の立ち位置について、そして自分の好きな味と個性を追求していきたい、と既に述べました。

シングルオリジンコーヒーに対してのエスプレッソ=イタリアのコーヒー

右からサンブーカ、アマレットなど、イタリアのリキュール
サンブーカ、アマレットなどイタリアにはたくさんのリキュールがあります。

ここまで書いてきて、思い出すのはイタリアのコーヒー文化です。

このサイトの名前は「sambuca(サンブーカ)」だし(『サンブーカ(イタリアのリキュール)まとめ』)、サードウェーブやシングルオリジンに対してのエスプレッソ、カッフェの存在について、書かずにはおけません。

均質化と対局にあるようなイタリアのコーヒー事情

セガフレードにて
こちらはセガフレードにて。

『バール、コーヒー、イタリア人 グローバル化もなんのその』という本があります(kindle・キンドルだと無料で読めます)。

amazonでは以下のような紹介文が付いています。

なぜイタリアには、スタバもコンビニもシャッター通りもないのか? 画一的な味、マニュアル、効率化など、どこ吹く風。量より質を貫く豊かな生き方とは?

『バール、コーヒー、イタリア人 グローバル化もなんのその』島村菜津
バール、コーヒー、イタリア人〜グローバル化もなんのその〜【電子書籍】[ 島村菜津 ]

スタバやコンビニがない!?

この本では、日本では想像しにくいイタリアのコーヒー事情や歴史、バールの役割について書かれています。

スタバの創業者、ハワード・シュルツはイタリアのヴェローナでカフェ・ラッテを飲んで感銘を受け、1985年にエスプレッソ・バー「イル・ジョルナーレ」をアメリカ・シアトルに開店。

その後1987年に名前を「スターバックス」と改めて世界に展開していったそうで、スタバにとってイタリアのバールはお手本のような存在だったでしょう。

そんなスタバがイタリアで広まっていないのは不思議でもあります(2018年9月、ミラノに初出店)。

スタバとは違う文化のイタリアン・バール

LAVAZZA(ラバッツァ)のコーヒー豆
LAVAZZA(ラバッツァ)の「クオリタ オロ」。

詳しくは上記の本『バール、コーヒー、イタリア人』に譲るとして、一つ上げるとするなら、イタリア人の「わがままな注文」がイタリアのコーヒー文化を作っていて、スタバが入り込む事が難しい、という状況があるようです。

確かに、コーヒーのメニューの多さや、好みに合わせてコーヒーを作ってくれるバリスタの存在は、スターバックスをはじめ、大手チェーンのオペレーションには馴染まないもののような気がします。

コーヒーに加える牛乳やお酒(サンブーカやアマレットなど、数十種類以上のリキュール)、それらの配分等、200種以上とも言われるメニューや、メニューにないものまでオーダーするという「わがままな注文」が通ってしまうイタリアのコーヒー事情は、グローバル化や均質化とは対極のようにも見えます。

使う豆も基準が違うエスプレッソの世界

illy(イリー)のコーヒー豆
illyはアラビカ種100%にこだわる事で有名なイタリア北部、トリエステのメーカー。

エスプレッソの少し専門的な話しをすると、エスプレッソに使われる豆は基本的にブレンドです。

クレマと呼ばれる、最上層にできる泡も重要視され、クレマの為にはロブスタ種をブレンドするのが良いとされます。

一部、illy(イリー)のようにアラビカ種100%にこだわるメーカーもありますが、多くのエスプレッソ用の豆はアラビカ種とロブスタ種のブレンドであり、これが一般的な日本人にとっての「コーヒー」とは大きく違うところです。

インスタントコーヒーやアイスコーヒー等、大量生産に使用される「質の悪いコーヒー豆」と言われる事が多いロブスタ種も、イタリア人にしてみれば一概には言えないようです。

ブレンドする事で却って複雑な味を作るという意味もあるようで、シングルオリジンにこだわるのとはまた違う考え方です。

コーヒー豆だけを見ても、日本で生活しているだけでは見えてこない、多様さがあるのだなと思います。

コーヒーベルトから世界に拡がる波

デロンギのエスプレッソ・モカマシーン
こちらはデロンギのエスプレッソ・モカマシーン。

サードウェーブの次、フォースウェーブ(第4の波)についてのニュースや記事を時々見かけます。

それは「焙煎する人」だったり、「次世代のマシン」だったり、様々な意見があります。

サードウェーブでは、農園や生産者のブランド化、消費者にとっては浅煎りのコーヒーでそれぞれの豆の個性を味わう、という流行が生まれました。

コーヒーがワインやクラフトビールのようなになってきているのは、歓迎すべき潮流でしょう。

スターバックスも現在は「リザーブ」や「リザーブバー」を展開して、より細かなニーズに対応するように進化しています。

フォースウェーブに期待するもの

中綱湖の西岸、石のベンチでカッフェ(カフェ)タイム
アウトドアでマキネッタを使ってエスプレッソを。

フォースウェーブがどのようなものになるか、まだわかりません。

しかし、『(1)コーヒー農家の困窮』で紹介したような状況やグローバリゼーションに対して、少しでも解決に近づく流行であって欲しいと思うし、そこではイタリアの人たちのような「わがままな注文」もまた、忘れてはいけない要素の一つのような気がします。

コーヒーの木の長い旅

コーヒーの木の実
コーヒーの木の実。農園で収穫され、長い旅を経て僕たちの元に届きます。

アメリカもイタリアも日本も、コーヒーの豆の生産地ではありません。

コーヒーの木の実が精製され、焙煎され、やがて僕たちのカップに注がれる時。

立ち上る香りの元を辿りたくなるような、限られた条件でしか育たない、アカネ科のコーヒーの木という植物の長い旅を想うような時間であれば、それはあらゆる課題解決のベースとなり得るはずです。

植物名コーヒーノキ
漢字名(和名)コーヒーの木
別名なし
学名Coffea arabica
英名Coffee
科名・属名アカネ科コーヒーノキ属
原産地エチオピア
花期6~7月
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ABOUT US
しょうじ(Shoji)
神戸出身、2016年に信州の山奥に移住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。