スギ花粉は樹々の悲痛な叫び

スギの雄花(雄花序)
スギの雄花(雄花序)。ここから花粉が飛びます。

毎年春になると花粉が話題になる、杉(スギ)。その特徴や歴史、そして日本の文化との関わりについて、書いてみたいと思います。

スギ(人工林)の現状

スギ林
スギ林。日本の森林の中で広大な面積を占めます。

日本は国土面積の67%が森林で、そのうちの約40%がスギ、ヒノキ、もしくはカラマツの人工林です。それらの多くは戦後の拡大造林によって植えられ、現在は放置されてしまっている為に過密になっています。そんな環境で、樹々は子孫を残そうと必死で花粉の量を増やしている状態、という説もあります。いずれにせよ、適正に間伐されていれば、これほど花粉症が騒がれる事はなかったでしょう。

スギという樹木の特徴

最も背が高くなる植物

日光杉並木
日光杉並木。総延長35.41㎞、世界最長の並木道としてギネスブックに登録されています。

スギは巨木になる樹木です。仲間にセコイアスギがあり、アメリカ・ヨセミテ国立公園のものは樹高が110mを超すものがあります。日本でも屋久島の縄文杉は有名ですね。樹高25m、幹の周囲は16mと国内で最も太い木です。屋久島から北は青森まで広く自生し、背が高いものは60mくらいになるようです。国内の樹種としては最も背が高くなるのがスギと言えるでしょう。

古くから日本人に利用されてきた歴史

杉玉
杉玉。こちらはまだ葉がまだ緑色です。「新酒が出ました」という表示のようなもので、徐々に茶色になっていきます。

大きくなる上に、日本人にとって有用な特徴をいろいろと持っていた為、幅広く利用されてきました。以下にその特徴を上げると…

スギの有用な特徴
●年輪と年輪の間が剥離しやすい
弥生時代の登呂遺跡から大量の板材が発見されていますが、これは年輪にそって割って板材を作っていたようです。のこぎりがない時代、スギの性質を上手く利用していたのですね。
●真っ直ぐに育ち、成長が早い
建築材として使用するには、曲がる事が多い広葉樹よりも真っ直ぐに育つ針葉樹の方が向いています。スギは名前の由来が「スグ(直)な木=まっすぐに伸びる」「すくすくと生える木=成長が早い」といった説もある通り、ピッタリな樹木なのです。
●柔らかくて軽い
柔らかいので加工しやすく、そして軽いので桶や樽といった液体を運ぶ道具に最適だったのです。また端材で作られたのが割りばしで、これも軽いのが良かったのですね。
他にも、線香はスギの葉で作られるし、伊勢神宮や日光の杉並木など、日本の文化はスギなしでは語れないでしょう。

石井味噌の味噌蔵
杉桶が並ぶ風景。こちらは信州・石井味噌の味噌蔵見学にて。

採取から植林、拡大造林、そして衰退へ

海ノ口上諏訪神社のスギの大木
スギの大木。

元々、日本には巨木が至る所にあり、それらを伐採して利用していたのがやがて江戸時代から植林による木材の利用(育成林業)が始まります。吉野杉や秋田杉といったブランドのスタートです。明治時代まである程度安定した運用がされていたのが、戦後の高度成長期の木材需要、政府による造林推奨政策によって大量に植林されるようになります。多くの天然林がスギやヒノキ、カラマツの人工林へと転換されました(拡大造林)。その後1964年に木材輸入の自由化が行われ、海外の安い木材との競争にさらされるようになり、さらに電気、ガス、石油へのエネルギーの移行によって徐々に林業は衰退していきます。

日本人とスギ

日光にあるイタリア大使館別荘
日光のイタリア大使館別荘。西洋式のスタイルとスギの特質を活かした日本の技が融合した見事な建築です。

屋久島には縄文杉をはじめ、樹齢2000年以上のスギが何本も残っています。太古の昔、同じように日本各地の森にスギの巨木が育っていた様子を想像します。神社仏閣に見られるようなスギの信仰は、威厳を持ったスギの姿によって説得力を持ったでしょう。参道や杉並木、スギの特性を活かした文化には今も日本人と植物との良好な関係が伺えます。世界的に見ても、自然と人間とのこうした付き合い方は貴重なものでしょう。

スギの学名は「隠された日本の財産」

スギの花期は2~4月頃
スギの花期は2~4月頃。花粉は風媒花で、風に乗って遠くまで運ばれます。

現在、戦後に植えられた多くのスギは人手不足や販売不振によって放置され、花粉症や土砂災害の元凶となってしまっています。しかし(スギだけでなく)、それぞれの植物に罪はありません。スギの学名は「Cryptomeria japonica(クリプトメリア ヤポニカ)」。隠された日本の財産という意味になります。財産と見るかどうかは、私たち自身なのです。

熟した雌花・スギの球果
熟した雌花。スギの球果です。
植物名 スギ
漢字名
別名
学名 Cryptomeria japonica
英名 Japanese cedar
科名・属名 スギ科スギ属
原産地 日本
花期 2~4月頃
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2 件のコメント

  • 私も花粉症で、春はとても辛く外出が億劫になります。花がたくさん咲いているので見に行きたいのですが、ためらってしまうほどです。でも、そんな春に恨めしく思う杉の木でも花粉の飛ぶ時期を過ぎてしまえぼ、杉並木を歩けば心癒されるし、シダローズを見つければ楽しいし、箱根神社にある大きな木に出会った時はあまりの立派な姿に抱きついてしまったほど嬉しかったり…全く単純なものです。題名にもなっていますが、杉花粉は木々の悲痛な叫び…。本当にそうなんだろうなと思います。本当に木に罪はないですね。人間の行ったことの結果なので、花粉で苦しめられても仕方ないなのかなと思って諦めてみたり…。そんな中でいつかは屋久島の杉を見てみたい。ヨセミテの世界一大きな杉も見てみたい…。などと、花粉に苦しめられていない時にはいつも杉の木に憧れを抱いていたりします。それに杉は、日本の文化にこんなに活躍しているということを知っては恨めしいなんて思ってはいけないなーと。でもやっぱり春は辛いんですよねー(泣)花粉とも上手くつき合えたらいいのですけれどね。

    • >さきこさん
      花粉症でしたか!? そうでしたか。。。しかしおっしゃる通りで、事情を知ると、優しい視点で見る事ができたりしますねd(^_^o)
      僕も、いつか屋久島には行ってみたいです。ヨセミテは大学生の時に行った事があって、懐かしいです。
      いずれにせよ、植物への関心がもっと高まって、放置林の改善、ひいては花粉の低減にもなって行けば良いなと思います。
      さきこさんの花粉症にはまだしばらくの時間が必要かと思いますが、
      こうして共感いただけるのは嬉しいし、僕は自分でできる事をしっかりとやっていこうと思います!
      ありがとうございます!

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    神戸出身、2016年から信州在住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。2019年~イタリア・トリノの自転車ブランド・3Tアンバサダー。