楓と書いて、普通はカエデと読みますが、「フウ」という読み方もあります。
その場合、フウの木(タイワンフウ)の事を指します。
牧野富太郎博士の『植物一日一題』では、そんな「楓とモミジ」の名前の由来など、植物に関する随筆を100話、読む事ができます。
『植物一日一題』の「楓とモミジ」
「楓とモミジ」の前半部分を短く要約します。
中国の有名な詩「山行」の中に「楓」が登場する。日本人はこの「楓」をAcerすなわちMapleのカエデすなわちモミジであるとして疑わず、詩人はみなそう信じているが、この詩の「楓」は全く違った種類の樹木を指している。その間違いを最初に指摘したのは貝原益軒で、「楓」はカツラの木の事だとした。しかしこれも間違いで、フウの木の事を指す。
『植物一日一題』「楓とモミジ」牧野富太郎※要約
後半では、こんな事も書かれています。
楓が「カエデ」ではないとしたら、詩人が困る、と。
何故なら日本のカエデを表す一字がないから。
楓=カエデが一般的
時代は変わり、現代では「カエデ」とカタカナで書く方が一般的だと思います。
そして、もし楓という字が使えないとしても困る詩人は(昔に比べれば)多くないでしょう。
それよりも、英語ではイロハモミジは「Japanese Maple」だったり、イタヤカエデの英名はなかったり、日本の紅葉(もみじ)の文化や、カエデとモミジの見方に豊かさを感じる人は多いと思います。
ジャガイモやキャベツについての作品も
「楓とモミジ」の他に、『植物一日一題』では「馬鈴薯とジャガイモ」「キャベツと甘藍」などの野菜をテーマにしたものから、「アサガオと桔梗」「ヒマワリ」のような身近な花について等、幅広く植物について書かれています。
昭和21年当時の100日間の記録
それぞれの作品を牧野富太郎博士は昭和21年(1946年)8月17日から毎日1作品、100日間書き続けて完成したそうです。
本として発行されたのが1953年。
当時と現代とでは、日本人と植物の関わり方も、使う言葉も大きく変わってきていますが、そんな「記録」としても楽しむ事ができます。
台湾が日本だった時代
「楓とモミジ」の後半では、「台湾も中国に還して日本のものではないから、そんな木の和名はどうでもよいワ」という表現があります。
「台湾が日本のもの(!?)」とビックリしますが、歴史の教科書よりもこうした作品を読む方が頭に入ってきたりしますね。
フウの木の名前は「カゼカエデ」になっていた可能性も(!?)
この章の最後には「フウの木の名前を“カゼカエデ”(風に吹かれて揺らぐから)としたらどうだろうか」とも書かれています。
僕が暮らす信州の山間部にはフウの木はありません。
あるのは貝原益軒が間違えた(!?)カツラの木か、自生のカエデの仲間です。
今度街に出たら、フウの木が風に揺らぐ姿を確認したいですね。
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