マツヨイグサ(待宵草)はアカバナ科マツヨイグサ属の植物ですが、オオマツヨイグサなどを含め、マツヨイグサ属の総称としてツキミソウ(月見草)と呼ばれる事が多いです。
この記事では、黄色い花のマツヨイグサの仲間について、その特徴や歴史、紹介されている書籍などについても書いています。
黄色い花のマツヨイグサ(待宵草)の仲間
アカバナ科マツヨイグサ属の中で、黄色い花のものは主に4種あります。
メマツヨイグサについては、花弁の間に隙間があるタイプをアレチマツヨイグサ、ないものをメマツヨイグサと区別される場合もあります。
※参考にした本『山渓カラー名鑑 日本の野草』
マツヨイグサの原産地と移入時期
マツヨイグサの仲間はどれもアメリカ大陸原産で200種くらいあり、世界各地で野生化しています。
日本には江戸時代に南米原産のマツヨイグサ、明治時代にコマツヨイグサ、メマツヨイグサ、オオマツヨイグサ(こちらはヨーロッパを経由して)が入ってきました。
白い花のツキミソウは絶滅
ちなみに、植物学的に言う「ツキミソウ」は普通には見られない花です。
戦後の宅地造成等の環境の変化によって絶滅したとされます
マツヨイグサ属の植物の事をツキミソウと呼ぶようになり、名前だけは残っていますが、上記『山渓カラー名鑑 日本の野草』など、どの植物図鑑にもツキミソウは掲載されていません。
マツヨイグサの移り変わり
『柳宗民の雑草ノオト』には、そんなマツヨイグサの移り変わりについての記述があります。
この仲間は、わが国に十種ほどが帰化しているが、名称的には江戸時代に入ってきたツキミソウが有名で、その名がこのグループの総称になってしまっているようだ。本物のツキミソウは白花で、近頃はあまり見掛けなくなってしまった。この仲間は栄枯盛衰が激しいようで、全国的に野生化して勢力を広めたオオマツヨイグサも、近頃は同属のメマツヨイグサやアレチマツヨイグサに押されて、以前ほど見掛けなくなってしまった。
『柳宗民の雑草ノオト』「オオマツヨイグサ」より
太宰治の「月見草」はオオマツヨイグサ
『柳宗民の雑草ノオト』「オオマツヨイグサ」では、月見草と待宵草についてコンパクトにまとめられていて、読み物としても面白いです。
太宰治の「富士には月見草がよく似合ふ」(『富嶽百景』)についての説明もあり、この時の「月見草」は実際にはオオマツヨイグサであった事も書かれています。
帰化植物の変遷の中で
河原や道路脇など、どこでも咲いている印象のマツヨイグサですが、それはもしかしたら(今では珍しい)オオマツヨイグサかも知れないと思うと、確かめたくなったりします。
英語ではイブニング プライムローズ=夜のサクラソウ
月見草も待宵草も、夜に開花する特徴(夜開性)を捉えた名前です。
英語でも「Evening primrose(イブニング プライムローズ)」、夜のサクラソウという名前です。
アメリカの先住民が薬草として利用していたそうで、現代でも種から抽出したオイルのシャンプーやサプリメントなどの製品があります。
マツヨイグサの冬枯れ
信州の山間部では、積雪期の冬枯れの姿も目立つマツヨイグサです。
雪の重みにも耐えられるほどに固い茎と実(そう果)は逞しく見えますが、厳しい生存競争の過程でもあるんですよね。
夏の夜や冬の雪、同じ時間を共有する事はけっこう特別な事なんだと思わせてくれる、マツヨイグサの仲間と月見草です。
植物名 | メマツヨイグサ |
漢字名 | 雌待宵草 |
別名 | ツキミソウ(月見草) |
学名 | Oenothera biennis |
英名 | Evening primrose |
科名・属名 | アカバナ科マツヨイグサ属 |
原産地 | 北アメリカ |
花期 | 6~10月 |
●マツヨイグサ/茎は高さ30~90㎝で赤く染まることが多く、花は径3㎝ほどで、しぼむと黄赤色にかわる。
●コマツヨイグサ/茎は地面をはうか斜めに立ち、高さ20~60㎝に。葉は羽状に裂ける。花は日中も咲き、径2~3㎝と小さい。
●メマツヨイグサ(アレチマツヨイグサ)/茎は下部から枝を多数だして立ち上がるが、群生状態ではあまり枝をださない。高さ30~150㎝となり、花は径5㎝内外で花弁は4個、夜咲くが日中でも残る。
●オオマツヨイグサ/茎は高さ80~150㎝、花は大きく8㎝内外あり、夜咲くが、涼しいと日中でも咲く。北米原産の植物を元にヨーロッパで作られた園芸種といわれる。