信州の夏の山で目立つ花木の一つに、ノリウツギがあります。
今回の記事は、林縁に咲く夏の白い花・ノリウツギと山暮らしについて。
意外と忙しい、山暮らしの夏
山暮らしというのは、のんびりしているようで、実際には忙しいです。
草刈りや来シーズンの薪割り、家の補修やら、なんだかんだとやる事があります。
そうすると
「あの花の写真は今年も撮れなかったな(残念)。また来年」
というような事がよくあります。
むしろ、そうやって日々の雑事に追われて撮影できていない植物の方が多いです、圧倒的に。
林縁にいつでも咲いている(!?)ノリウツギ
そんな中、林縁に咲くノリウツギは、日々の忙しさと並走してくれているような「焦らなくても、いつでも待っているよ」と言ってくれているような、そんな気もするのです。
林縁とは、森林が草地や裸地に接する部分の事を言い、道路脇も林縁部分になっている事が多いです。
それはつまり、自動車でも自転車でも徒歩でも、通過すると(花が咲いていると)目につきます。
他の白い花としては春はオオカメノキ、夏はリョウブなど
信州の山で、白い花として目立つのは、春だとオオカメノキ(以前にオオカメノキの白い花についての記事を作っています)。
夏はノリウツギ、リョウブなどでしょうか。
春、暖かくなってオオカメノキの花期が来て、真夏はノリウツギ。
周りの緑色が深くなり、強い日差しに照らされて、白い花が際立ちます。
中心部に両性花、周りに装飾花
花のように見えるのは装飾花で(アジサイのように)、本当の花は中心部にある小さなもので、円錐形の花序を作ります。
花期は7~8月ですが、花期が終わっても装飾花はずっと残っています。
花が枯れても、花が咲いているように見えるのです。
ちなみに、庭木としてもノリウツギは人気ですよね。
ミナヅキという、花が全部装飾花のものもあります。
秋も冬も残っている装飾花
冬が来て、木々が落葉した中、ノリウツギは目立ちます。
春の雪解けの頃には色が抜けて真っ白になって、また別の花のようにも見えたり。
装飾花がない(目立たない)期間は春から初夏にかけてのほんの少しだけで、その季節というのは周りに花が多いので、“他に任せた”という感じでしょうか。
そして夏が来て、ノリウツギの白い花が咲くころ、あっという間に過ぎた春(たくさんの花の写真を撮り逃した春)を振り返るのです。
忙しい山暮らしに寄り添う花
草刈りや薪割りに勤しむ傍ら、ノリウツギの装飾花はずっとそのままでいてくれていて、秋になり、冬が来てもシャッターチャンスはあります。
ゴミを出しに行ったり、道路の掃除をしたりして、ふと林縁に目をやると、そこにはノリウツギがいます。
春の芽吹き
春になると、鮮やかな芽吹き。
冬を越した装飾花と選手交代です。
ヒトも植物も、自分が快適だと思う環境を求めて、生きています。
ノリウツギが選んでいる林縁には、そこならではの光や湿度などの条件がありますが、ヒトもそれぞれに適した環境があるのでしょう。
音が溢れる夏
来シーズンの薪、足りるかな? と試案しながら作業していると、妻が虫に驚いて「ギャーッ」と叫んでいます。
夏のこの時期、虫たちにとっては短い活動期間でもあります。
静寂の冬へ
ノリウツギに雪が積もる頃、他の木々の多くは花も葉も落として春に備えています。
僕は雪かきや道路の氷割りの作業の合間に、冬芽や装飾花の写真を撮ります。
急ぐ必要はありません、一瞬で過ぎる春や夏と違って、山暮らしの冬はとても長いのです。
植物名 | ノリウツギ |
漢字名 | 糊空木 |
別名 | ノリノキ、サビタ |
学名 | Hydrangea paniculata |
英名 | Panicled hydrangea |
科名・属名 | アジサイ科アジサイ属 |
原産地 | 日本、樺太、中国など |
花期 | 7~8月 |
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