ヤナギというと「シダレヤナギ」が有名で、水辺の風景のイメージですが(時代劇とか)、山間部では春に咲く花が楽しみな樹木です。
信州の山間部だと、まだ他の木々が芽吹く前、雪がまだ残っているような季節に花を咲かせるヤナギ科の樹木たち。
今回の記事はそんな、ヤナギの花について。
最も有名なヤナギ科の樹木=シダレヤナギ
ヤナギの樹木というのは、シダレヤナギに代表されるように、水辺や湿った土地を好むものが多いです。
「柳の下の泥鰌(とじょう)」のヤナギですね。
そんなシダレヤナギが最も美しいのは新緑の季節だと思います。
ソメイヨシノ(桜)の花が咲く頃、シダレヤナギの新緑(芽吹き)は鮮やかで、よく見ると花も咲いています。
山間部のヤナギの樹木の花の季節
シダレヤナギは中国原産で、挿し木で増やされてきたので、都市部の樹木です。
なので、山間部にはシダレヤナギは生育していません。
しかし、ヤナギ科の仲間の樹木というのはたくさんあります。
そして、山間部のヤナギの木の花は、目立ちます。
都市部のシダレヤナギの花はあまり目立ちませんが、山間部のヤナギの花は遠目にも見つけられて、気になる存在です。
バッコヤナギ
バッコヤナギは、背が高く(高木)、崖地のようなところに生えている事も多いので、特に目につきます。
イヌコリヤナギ
イヌコリヤナギは低木なので、花の観察をしやすいです。
また、葉や花の穂が「対生」なのも特徴です。
他のヤナギの木は葉と穂が交互につく「互生(ごせい)」が多いので、見分ける上での決め手になります。
(上高地の)ケショウヤナギ
ケショウヤナギは、信州の上高地と北海道に隔離分布する植物として有名です。
こちらは葉の展開と同時に花が咲きます。
新緑と花の季節も良いのですが、冬も見どころです。
ケショウヤナギは、冬は古い枝が赤くなり、まるで花が咲いているように鮮やかなのです。
「化粧をしたヤナギ」という名前(化粧柳)の由来でもあります。
※冬の上高地についても、以前に記事にしています(下記)。
ネコヤナギ
ネコヤナギは、生け花でも使われる、メジャーなヤナギ科の花ですよね。
『日本人なら知っておきたい 四季の植物』という本から、少し引用します。
冬の芽鱗の茶色から銀色、紅色、黄色、さらに緑色の芽吹きと、春の流れは刻々とネコヤナギを変化(へんげ)させていく。なお、雌木は銀色の繭の後、雄木のような華やかな色のうつりはない。いずれにしても花が咲き終えると、清少納言の表したように花穂がみすぼらしくなってしまう。
『日本人なら知っておきたい 四季の植物』湯浅浩史「ネコヤナギ」より
花の後は白い綿毛(柳絮)の季節
上記『日本人なら知っておきたい 四季の植物』には、ネコヤナギについて、下記のような記述もあります。
春の終わりの頃、雌木の穂は熟して白い絹糸でおおわれた種子を飛ばし、再び目を引く。
『日本人なら知っておきたい 四季の植物』湯浅浩史「ネコヤナギ」より
ヤナギの樹木は花期が終わると、柳絮(りゅうじょ)という、白い綿毛のついた柳の種子を飛ばします。
春の上高地(5月~6月)を歩いていると、フワフワと柳絮が風に舞っていて「何が飛んでいるの?」と話している人をよく見かけます。
ヤナギ科の樹木の旅
山間部では目立つ存在の、ヤナギ科の樹木の花たち。
実際には、たくさんの種類があって、見分けるのはなかなか難しいのですが(上高地だけでも10種類以上のヤナギ科の樹木があります)、まだ森に色が少ない季節、(本格的に)春が来たなぁと感じさせる花です。
今回は信州の山間部のヤナギ科について書きましたが、平野部(都市部)のシダレヤナギについても、またそのうち書いてみようと思います。
緑陰樹としてのシダレヤナギの歴史も、なかなか面白いのです。
長くなりそうな、ヤナギ科の樹木の旅の物語です。
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