先日(11/14)、松本市・四賀地区のアカマツ林の(松枯れの)現地説明会と講演会に参加してきました。
松本市「里山をみんなで考える市民フォーラム」(松枯れの現地説明会・講演会)紹介ページ
とても勉強になったので、その内容と感想を記事にしておきます。
※マツ枯れのメカニズム、経緯などについてはこの記事では触れません。
信州(松本市)のアカマツ林は広葉樹林へと遷移中
結論から言うと、松枯れのアカマツ林は現在、広葉樹林へと遷移している最中なので、放置しておけば良い、との先生のお話しでした。
薬剤の樹幹注入も、散布(空中散布)もしなくて良い、との事。
何故、樹幹注入も薬剤散布も必要ないのか?
これまで、各地で樹幹注入剤(予防薬)をアカマツに注入したり、薬剤散布がされてきましたが、樹幹注入は誤用が多いのと、薬剤散布と伐倒駆除を同時に実施しないと、効果が低いそうです。
樹幹注入は5~7年で繰り返し注入する必要があり、そしてまた最近は枯死などのトラブルが出ているそうです。
アカマツ林内では広葉樹が育っている
今回は四賀地区のアカマツ林に行き、現地で先生から説明していただくイベントもありました。
間近で観察したのは、上層部はほとんどアカマツで、枯れ木も目立つような林でした。
遠目にはアカマツ林、とういような林ですが、林内に入ると下層にはコナラやクリ、ソヨゴなどの木が生えています。
つまり、将来的にはアカマツ林からコナラなどの広葉樹林に変わる事が予想されます。
樹幹注入や薬剤散布をしてアカマツ林を継続させる努力をするよりも「広葉樹林への遷移を見守る」方が良い、との考えですね。
心配なのはシカの食害
では、全く何も心配ないのか?
と言うとそうではなく、下記のような事が必要だそうです。
特に危惧されるのは「シカの食害」で、何故かとう言うと、松林の下層のコナラなどの幼木をシカが食べる事によって、森林の再生が困難になってしまう可能性があるのだそうです。
アカマツ林ならではの意見対立
今回、第2部終了後には質疑応答の時間があり、質問した方々には並々ならぬ気持ちがあったように感じました。
これまで、空中散布に対する強い反対意見があり、今年になって中止になった背景(市長が変わりました)があります。
「農薬の空中散布」と聞くと、誰もが反対しそうではありますが、賛成派もいるのはマツタケが絡んでいたりするのでしょうね。
移住者である僕は詳しい事情は知らないのですが、森や林業の話しでよくある「木材か環境か」という対立と似た構図なのだと思います。
個人的な感想(まとめ)
個人的な感想としては、松枯れの悲惨な光景が数十年すれば広葉樹林になる、と聞いてホッとしました。
シカの食害などの懸念はありますが、松枯れだけの問題ではありません。
同時に、松枯れの問題もはやり、里山が利用されなくなってきている事と無縁ではないのだと、改めて感じました。
アカマツ林だけでなく、カラマツ林やスギ林も、維持するのであればヒトの手によって管理され続ける必要があります。
将来的にどんな森にするのか、我々の子どもや孫の世代にどんな自然を残すのか、地域の森を思い描いていきたいですね。
※アカマツについては、以前に『冬のアカマツ・クロマツ、世界のマツ』という記事を作っています。
●枯死木の倒木による事故を防止する為の対策は必要。
●まだ枯れていないマツ林を資源として利用する。
●山林所有者でなくても、森林は地域の資産と意識して欲しい(環境保全)。
●シカ密度の増大には注意(食害)。