冬になると、マツの木に雪吊りが施されているのを見かけます。
東北や北陸、積雪量の多い地域で、マツの枝が折れないように縄で吊りこむ樹木の管理手法ですが、今は積雪が少ない地域でも、装飾として(実際には吊り込まずに)東京では浜離宮、日比谷公園などでも見かけます。
冬こそ撮りたくなる、日本のアカマツ・クロマツ
外国の観光客の人たちが写真を撮っていたりすると、日本人としては誇らしいような、嬉しい気持ちになります。
松竹梅、門松、盆栽、能の舞台、白砂青松。
日本の文化と関わりが深い、マツという木について、海外の人に知ってもらうきっかけにもなるのが雪吊りではなかろうかと思います。
北半球に広く分布するマツ科
植物としてのマツの仲間は、北半球の温帯を中心に広く分布し、カラマツなどの例外を除いて、ほとんどが常緑の針葉樹です。
ツガ、トウヒ、モミ、ヒマラヤスギなどもマツ科ですが、マツ科の中でもマツ属に含まれる、クロマツとアカマツという2つの種が、日本での身近な「松」と言えます。
海のクロマツ、山のアカマツ
マツ科マツ属の中の、クロマツとアカマツが日本の代表的な松の木だとして、クロマツは防風林や砂防林として、海岸沿いに植林されてきました。
白砂青松のマツであり、雄松とも呼ばれます。
それに対して、アカマツは雌松と呼ばれ、山野に多い樹種です。
植林されたアカマツ林もありますが自生も多く、例えば僕が住む信州の高原ではシラカバやモミの木、ミズナラなどと同じように、普通に見られる樹種です。
樹皮が赤く(名前の通りです)、葉はクロマツに比べて柔らかく、松ぼっくりが小さめだったり、クロマツが雄、アカマツが雌というのも納得、上手いネーミングだなと思います。
松枯れで苦しむ日本のマツ
そんなクロマツとアカマツは近年、伝染病によって苦しんでいます。
「マツ枯れ」と呼ばれる枯死で、信州でも大量に枯死したアカマツ林を見かける事がありますが、その多くがマツノザイセンチュウという線虫が引き起こす伝染病が原因です。
北米から移入されてしまったマツノザイセンチュウに耐性がない(弱い)日本のマツが次々に被害にあっているという状況で、昭和50年代のピーク時に比べると現在は5分の1程度に減ってはいますが、今でも年間44万立方メートルもの被害量があります(平成28年度・林野庁のデータより)。
枯れるイタリアカサマツ
似たような事例として、海外ではイタリアカサマツが枯れる被害が出ています。
1990年代、アメリカからイタリアに渡ったマツヘリカメムシによって発育が阻害されるという症状で、今ではヨーロッパ全体に被害が広がっています。
山奥のマツはまだ元気
信州の高原のような奥地では(今のところ)、マツ枯れは見られません。
雪の中でも生き生きとした緑色の葉をつけ、雪面の中で引き立つ赤い樹皮は、冬こそ写真を撮りたくなる瞬間が多いと感じます。
雪の季節のアカマツ
この冬も、どこか日本庭園に出かければ、雪吊りされた、大事にされたマツの姿を多くの観光客が撮っているでしょう。
元気なマツには、力があります。
それぞれの国や地域の、心の中のマツの木と比較しながら、写真に収めているのかもしれません。
アカマツが元気な信州の高原には、一足早い冬がやって来ます。
植物名 | アカマツ |
漢字名 | 赤松 |
別名 | メマツ(雌松) |
学名 | Pinus densiflora |
英名 | Japanese red pine |
科名・属名 | マツ科マツ属 |
原産地 | 日本、朝鮮半島、中国北東部 |
花期 | 4月 |
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