ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草)とカラマツ林

ベニバナイチヤクソウの花
ベニバナイチヤクソウ。

信州のカラマツ林で群生するのをよく見かけるベニバナイチヤクソウ。

この記事では、春の花や冬の姿、半寄生という変わった特徴なども紹介します。

カラマツ林に多い、ベニバナイチヤクソウの群生地

ベニバナイチヤクソウの群生地
ベニバナイチヤクソウの群生地。

ベニバナイチヤクソウは群生している事が多い植物です。

信州では、カラマツ林の林床でよく見つけられます。

分布は「山地帯から亜高山帯」とされるので山間部の植物でもあります。

ベニバナイチヤクソウの花期

ベニバナイチヤクソウの蕾
ベニバナイチヤクソウの蕾(開花直前)。

花期は6月~7月頃。

ピンク色の花が下向きに咲きます。

花茎の下から上へと順番に咲いていきます。

開花直前はストロベリー・アイスクリームのようで、その姿も見どころです。

花言葉は「恥じらい」

ベニバナイチヤクソウの花
こちらは開花し始めた状態。

花言葉は「恥じらい」。

下向きに咲く姿からすると、確かにそのようにも見えます。

ベニバナイチヤクソウの名前の由来

ベニバナイチヤクソウの花
こちらは花茎の上部まで開花した状態です。

漢字では紅花一薬草。

名前の由来は、この草一つでいろんな病気に効く事から「一薬草」(その紅花)とも言われますが、諸説あります。

冬も目立つ常緑(英語でウィンター・グリーン)

雪の中のスギゴケ
冬のスギゴケとベニバナイチヤクソウ(丸い葉)です。

ベニバナイチヤクソウは常緑の多年草です。

カラマツ林が雪に覆われ、他の草が枯れている中、残っているベニバナイチヤクソウの葉は逞しくもあります。

「イチヤクソウ属」は英語では「Winter green(ウィンター・グリーン)」。

日本語の名前との視点の違いが面白いですね。

半寄生という特徴(根と共生する菌類から栄養を吸収)

ベニバナイチヤクソウの実
ベニバナイチヤクソウの実。

ベニバナイチヤクソウが特徴的なのは、半寄生の植物である事です。

葉をもち、光合成を行いますが、足りない栄養を菌類から接種しています。

そして面白いのは、発芽の時に共生する菌類と、葉が成長してからとでは、菌類の種類が違う(菌類を乗り換える)事です。

菌根を持ち、根に共生する菌類から栄養を吸収する、こうした植物は菌従属栄養植物と呼ばれます。

その中で、ベニバナイチヤクソウは光合成能力もあるので、部分的菌従属栄養植物という位置づけになっています。

カラマツ林の中で生き残る戦略も、本当にいろいろあるのだなと気づかされますね。

イチヤクソウ属の分布と世界のイチヤクソウ

『センス・オブ・ワンダー』の表紙はイチヤクソウの仲間です
『センス・オブ・ワンダー』の表紙はイチヤクソウの仲間です。

ベニバナイチヤクソウが属する、イチヤクソウ属の仲間は北半球に30~40種います。

レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』の表紙の絵もイチヤクソウの仲間です。この作品の中で描かれている情景はアメリカ北東部・メイン州の海岸沿いのものが多いです。

少し抜粋します。

花崗岩にふちどられた海岸線から小高い森へ通ずる道には、ヤマモモやビャクシン、コケモモなどが茂り、さらに坂道を登っていくと、やがてトウヒやモミのよい香りがただよってきます。足もとには、ブルーベリー、ヒメコウジ、トナカイゴケ、ゴゼンタチバナなどの、北の森に見られるさまざまな植物のじゅうたんが敷きつめられています。

『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン
『沈黙の春』(Kindle)と『センス・オブ・ワンダー』

信州のカラマツ林から

冬のベニバナイチヤクソウ
冬のベニバナイチヤクソウ。

北半球に分布する世界のイチヤクソウの仲間も、『センス・オブ・ワンダー』のイチヤクソウも、信州のカラマツ林とどこかで繋がっていると想像すると、目の前のベニバナイチヤクソウの向こうから、メイン州の海辺の波の音が聞こえてきそうです。

半寄生という、カラマツ林と共に生きるという選択をしたベニバナイチヤクソウには、森林の複雑な生態系について考えさせられます。

そして、身近な植物を介して世界と繋がる事ができるのは、ヒトならではの能力の一つでもありますね。

植物名ベニバナイチヤクソウ
漢字名紅花一薬草
別名※生薬名はロクテイソウ
学名Pyrola incarnata
英名なし※イチヤクソウ属はWinter green
科名・属名ツツジ科イチヤクソウ属(旧分類ではイチヤクソウ科)
原産地日本
花期6~7月
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しょうじ(Shoji)
神戸出身、2016年に信州の山奥に移住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。