環境問題のバイブルとも言われる、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』。
池上彰さんの『世界を変えた10冊の本』では、『聖書』や『コーラン』『アンネの日記』『資本論』等と共にこの本も選ばれています。
まさしく「世界を変えた」一冊であり、今後も世界に影響を与え続けるでしょう。
この記事では、そんな 『沈黙の春』と、同じくレイチェル・カーソンの代表作である『センス・オブ・ワンダー』についても紹介します。
『沈黙の春』の出版は1962年(農薬が大量に使用されていた時代)
現代では、農薬や除草剤、殺虫剤が危険だという認識や、「食物連鎖」「生物多様性」といったキーワードは多くの人が共有していますが『沈黙の春』が出版されたのは1962年。
DDTやディルドリン、アルドリン、パラチオンといった農薬、殺虫剤が大量に使われていた時代に、その危険性を告発する事はどれだけの勇気と情熱が必要だったのだろうと想像します。
レイチェル・カーソンの怒りや焦り(?)も読み取れる、たくさんの事例
『沈黙の春』では、世界中のたくさんの事例が紹介されています。
日本からアメリカに渡ったマメコガネが繁殖し、当初は合成殺虫剤が発明されておらず、自然防除によって被害を小さくした成功例があるにも関わらず、その後イリノイ州で10万エーカーを超える範囲に殺虫剤を散布したという事例。
2017年に日本でも話題になったヒアリ。
アメリカには定着して40年以上が経過していて(当時)、特に被害は大きくなかったのにディルドリンとヘプタクロールを大量に散布した結果、場所によっては野生生物が全滅したという事例。
数え切れないほどの多くの事例の羅列からは、レイチェル・カーソンの怒りや焦りのようなものを読み取れます。
詩的なレイチェル・カーソンの作品世界
本来、レイチェル・カーソンの文章には、自然を楽しむ、優しい視点が詰まっています。
僕は雨の中の森の雰囲気が大好きなのですが、『センス・オブ・ワンダー』ではそうした情景が見事に描かれています。
雨の日は、森を歩き回るのにはうってつけだと、かねてからわたしは思っていました。メインの森は、雨が降るととりわけ生き生きとして鮮やかに美しくなります。針葉樹の葉は銀色のさやをまとい、シダ類はまるで熱帯ジャングルのように青々と茂り、そのとがった一枚一枚の葉先からは水晶のようなしずくをしたたらせます。
『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン
作家志望でありながら科学者の道を歩んだレイチェル・カーソン。
そんな背景が彼女ならではの作品世界を作っています。
『沈黙の春』で悲惨な環境汚染の数々を並べる事は本意ではなかったと思います。
『沈黙の春』によって動いた世論
『沈黙の春』出版の2年後、1964年にレイチェル・カーソンは癌でこの世を去ります。
しかし、大きな反響を呼び、アメリカではケネディ大統領がこの本に関心を示し、1972年にDDTが禁止されます。
日本でも1971年に販売禁止に(戦後はシラミの駆除にDDTが大量に使用されていました)。
環境問題への関心の高まりもあって、21世紀の今、農薬も殺虫剤も以前よりは良くなっています。
しかし、こうした問題は人類の長い歴史の中では始まったばかりです。
レイチェル・カーソンが危惧したように、農薬が田畑から川へ、川から海へと流れ込んだり、いくつもの物質と交じり合う事で予期せぬ被害が出たり、生物濃縮で蓄積された毒物によって異常事態が起こったり。
日本は外国に比べて抗菌志向、抗生物質依存という状況もあります。
アップデートし続ける必要がある知識
大事な事は、過去の過ちを繰り返さないように学び、それぞれが自分で判断し、少しでも改善できるように行動する事でしょう。
スーパーマーケットに並んでいる食品や殺虫剤が全て安全とは限らないし、最新の知識が後になって間違いだったとされる事もあります。
『沈黙の春』でも、自然防除の成功例として外国から天敵を移入する方法が紹介されていますが近年、外来種の扱いはかなり慎重になっています。
当時の学者もレイチェル・カーソンも、最善の方法を探り、闘ってきた歴史があります。
悪者にされるような薬品であっても、救ってきた命もあります。
複雑化する環境問題に対して
地球温暖化や食料、エネルギー問題、原発。
1960年代では想像できなかったほどに、現代の課題は大きくて複雑です。
日本も熱帯化し、感染症の増加が懸念されるような時代です。
マラリアやヒアリ、それぞれの局面で過去にどんな対策が取られてきたのか、知る事で進む考えもあります。
そして、何よりも植物や自然と接する事で感性を磨き、害虫なのか益虫なのか、様々な理解を深める事は環境問題を考える上で必須でしょう。
『センス・オブ・ワンダー』に書かれているような自然との付き合い方、子ども達への接し方、植物の名前を覚えるよりも大事な事。
それらのメッセージはずっと未来に残っていくだろうし、これからも世界を変えていく助けになるのだろうと思います。
“センス・オブ・ワンダー”を大切に
僕も、微力ながら何かできるとしたら、こうして書評(書評になっていないかも知れませんが)を書き、植物に接する時は「感覚の回路をひらくこと、つまり、あたなの目、耳、鼻、指先のつかいかたをもう一度学び直す」という教えを守りながら写真を撮る事。
その時、少しくらいの虫を気にしない事(笑)。
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