『初雪のふる日』は安房直子(あわ・なおこ)さんの童話で、小学校の国語の教科書にも掲載されている作品です。
この記事では『初雪のふる日』のあらすじを紹介し、その後に僕の感想文を書いてみたいと思います。
『初雪のふる日』あらすじ
まずは「あらすじ」です。
(知っている人は読み飛ばしてください)
主人公は小さな女の子。
秋の終わりの寒い日、女の子は地面に石蹴りの輪を見つけます。
石蹴りは地方によって「けんけん」「けんぱ」など、いろんな呼び方がありますね。
地面に書かれた石蹴りの輪は不思議なくらいに長く、遥か山の方まで、どこまでも続いていました。
女の子は、その輪にピョンと飛び込みます。
すると、女の子の体はゴムまりのように軽くなり、輪に沿ってどんどん進んでいきます。
かた足、かた足、両足、かた足。
「こんなに長い石蹴りを誰が書いたんだろう?」と考えながら進んでいきますが、やがて空が暗くなり、雪が降り始めます。
吹雪になりそうなので、女の子は帰ろうとします。
その時、女の子の後ろも前も、たくさんの白いウサギが列になっている事に気づきます。
女の子は、いつかおばあさんから聞いた話しを思い出して、恐ろしくなります。
おばあさんの話しでは、初雪の降る日、白いウサギが一列になって山から山へ、村から村へと雪を降らせてゆき、もしもそのウサギの群れに巻き込まれたら、世界の果てまでとんでいって、小さい雪のかたまりになってしまう(帰ってこられなくなる)、との事でした。
大変な事になった、と女の子は止まろうとしましたが、ゴムまりのようにはずみ、石蹴りの輪のとおりにとんでいってしまいます。
(止まる事ができません!)
とびながら、女の子は、おばあさんが言っていた、一人だけ生きて帰れた子どもの事を思い出します。
助かったその子どもは「よもぎ、よもぎ、春のよもぎ」とおまじないを唱えて助かったのでした。
女の子はヨモギのおまじないを唱えようしますが、ウサギたちの声に邪魔されて上手くいきません。
すると、偶然足元にヨモギの葉を見つけ、それがきっかけとなり、無事に「よもぎ、よもぎ、春のよもぎ」と唱える事ができました。
気がつくと、女の子は知らない町にいて、ウサギもよもぎの葉も消えていました。
女の子は町の人たちに助けてもらい、バスで帰路に着きました。
『初雪のふる日』感想文
ここから僕の感想文です。
冬と春、季節のコントラストを雪とヨモギで
印象に残ったのは、雪の怖さや冬の厳しさと春の優しさ。
そんな季節のコントラストだ。
雪国に住んでいると(僕のように)、冬というのは美しくもあり、厳しい季節でもある。
みるみるうちに雪が積もり、車が動けなくなって渋滞になったり、日常生活の不便(雪かきや凍結など)がたくさんある。
冬の間、家を長期間留守にするのは不安だし、買物に出かけたりしても、なるべく早く家に帰る。
そんな生活をしているから、『初雪のふる日』の白ウサギの話しは、雪が降りだしたら早く家に帰るように、という教えのようにも感じた。
きっと昔は、こうした伝承が身近にたくさんあったはずで、自然の怖さや畏敬を感じながら人々は生きていたのだと思う。
同時に思うのは、そんな雪の季節、冬の厳しさが引き立てる、春のありがたみだ。
『初雪のふる日』では、ヨモギが春を象徴する存在として登場するが、厳しい冬を越す人だからこそ、共感できるのではないだろうか。
都市部に住んでいれば、電車やバスの中は暖房が効いているし、そうした「季節のコントラスト」(四季の感覚)は弱くなってきていると思う。
野菜や果物は一年中同じものを食べられるし、ヨモギのような春のありがたみも薄れてきている。
ましてや温暖化が進む現代である。
キーンと冷えた冬の厳しさ(楽しさも)を体験する機会は減ってきているし、自然との距離が離れていっている現代、『初雪のふる日』の白ウサギの怖さや、春のヨモギのありがたさは、多くの人にとって実感しにくい感覚かもしれない。
それが、雪がよく降るような寒冷地だと、雪解けや春の山菜は何にも代えがたい喜びとなる。
子ども達には、いろいろ聞いてみたい。
豪雪地帯に住む人たちの生活を知っているか?
昔と今とではどんな風に生活が変わっているか?
ヨモギを食べた事があるか?
雪の上のウサギの足跡を見た事があるか?
おばあさんやおじいさんの世代と我々とでは、持っている知識や経験は随分と違う。
違う地域に住む人の知識や経験もまた違う。
子ども達に聞くことで、一緒に学んでいく良い機会になるのではないだろうか。
ヨモギという植物
このブログは植物をテーマにしているので、ついでにヨモギについても書いておきます。
ヨモギとは、キク科の多年草で、山野や道路脇に普通に生えている草です。
春の若芽は食用にされ、よもぎ餅の材料になります。
特有の香りが邪気を払う力があると考えられてきて、「魔除け草」とも呼ばれていました。
よもぎ餅を食べるのは、そんな理由もあるんですね。
※ヨモギについての記事『ヨモギとニガヨモギ』を作成しました。
作者・安房直子さんの他の作品
『初雪のふる日』作者、安房直子さんの作品は他にも『花のにおう町』、『ねこじゃらしの野原』など、植物や自然を感じる本がいくつもあります。
例えば『花のにおう町』には5編が収録されていて、表題作の「花のにおう町」では秋のキンモクセイの香り、他の「秋の音」「ききょうの娘」なども、花の香りがするような作品です。
まとめ(『初雪のふる日』はちょっと怖い。その解釈は?)
『初雪のふる日』は、ちょっと怖いストーリーです。
しかし、怖いからこそ、最後にはホッとさせられます。
いろんな解釈が成り立つと思いますが、自然や植物の美しさは、怖さや厳しさがあるからこそ、というメッセージにも思えます。
個人的には、植物や動物とヒトとの交わりを通して自然を表現している、安房直子さんのそんな世界観が強く感じられる、そんな作品だと思います。
※小学校の教科書の感想文として『プラタナスの木』の記事も作っています。
参考になりました
髙橋輝一朗 様
コメントありがとうございます(^。^)
参考にしていただいて、嬉しいです!
いいお話でした
たける 様
コメント、ありがとうございます(^。^)
ずーーっと探しててたどり着きました!!
また読んでみます!!
確かに昔はトラウマだったな…笑
コメントありがとうございます(^。^)
ぜひまた読んでみてください!