日本でヨモギと言えば、お餅や団子に利用されますが、ヨーロッパのヨモギ(ニガヨモギ)は薬草系リキュールの原料だったり、「苦しみや裁きの比喩」として聖書にも登場したりします。
今回はそんな、日本のヨモギとヨーロッパのニガヨモギを比較しながら、キク科ヨモギ属について、書いてみたいと思います。
ヨモギという植物@日本
日本のヨモギといえば、道端でもよく見かける草であり、よもぎ餅(草餅)など、春の山菜(和ハーブ)としてもお馴染みですよね。
たくさんある、ヨモギの種類
そんなヨモギ、植物として詳しく見ると、オオヨモギ、ニシヨモギ、ヒトツバヨモギなど、たくさんの種類があります。
手元の植物図鑑『山渓カラー名鑑・日本の野草』には14種類のヨモギの仲間(キク科ヨモギ属)が掲載されています。
呼び名・地方名もいろいろ
呼び名も、地方名がいろいろとあります。
モチグサ、ダンゴグサ、モグサ、ヤイトグサ、沖縄ではフーチバー(ニシヨモギの事)など、食べ方・利用のされ方によって各地方で様々な名前があります。
それだけ、多様な使われ方をしてきたのが、ヨモギという植物です。
ニガヨモギという植物@欧州
日本と同じように、ヨーロッパでもヨモギの仲間は古くから利用されてきました。
ニガヨモギ(MugwortもしくはWormwood)と総称され、日本に自生するヨモギとは別種ですが同じくキク科ヨモギ属の植物です。
お酒(リキュール)にもよく使われるニガヨモギ
欧州のニガヨモギの使われ方として有名なのは、薬草系のリキュール(お酒)があります。
古くはアブサンからベルモット、パスティスなどのリキュールの原料の一つとして、ニガヨモギが使われてきました。
※アブサンについては、養命酒の記事『禁断の酒「アブサン」とニガヨモギ』が詳しいです。
このブログの名前「サンブーカ」の銘柄の中にも、ニガヨモギが使われている銘柄もあります。
聖書に出てくるニガヨモギ
もう一つ、欧州でのニガヨモギという存在を知る事ができるのは「聖書」です。
ニガヨモギが「苦しみや裁きの比喩」として聖書に登場します。
第三の天使がラッパを吹いた。すると、松明(たいまつ)のように燃えている大きな星が、天から落ちて来て、川という川の三分の一と、その水源の上に落ちた。この星の名は「苦(にが)よもぎ」といい、水の三分の一が苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ。
『新約聖書』「ヨハネの黙示録」
チェルノブイリの預言だった(!?)
上記「ヨハネの黙示録」については池上彰さんが『世界を変えた10冊の本』の中でも紹介していて、チェルノブイリの事についても触れています。
チェルノブイリという地名がウクライナ語で「苦よもぎ」という意味であることから、「ヨハネの黙示録」の預言が当たったと受け止める人たちがいたのです。
『世界を変えた10冊の本』「聖書」より(池上彰)
※『世界を変えた10冊の本』では「聖書」の他に「コーラン」や、(イスラーム原理主義の)「道しるべ」などの10冊が分かりやすく解説されていて、オススメです。
ヨモギとニガヨモギの違いと文化
こうして見てくると、ヨモギとニガヨモギは、日本とヨーロッパ(欧米)とでは、その印象は大きく違います。
植物としては、日本のヨモギは鮮やかな緑色で、葉の裏は白っぽいですが、ニガヨモギは全体的に白っぽく、そして「苦味」は日本のヨモギにはあまり感じません。
草餅やアブサンなど、長い旅を経てそれぞれの土地に適応し、植物とヒトとの文化があるのは面白いですよね。
ヨモギを味わう平和な春を願って
いつか、いろんな事が落ち着いて、ウクライナやヨーロッパの人たちと話す機会があったなら、日本のヨモギ(Japanese mugwort)の事を、どんな風に説明しましょうか。
「餅や団子の材料として使われ、その香りは春を連想させるのだ」と説明したら、ニガヨモギとの違いに驚くかもしれません。
平和な春が訪れるのを願いながら、ヒトとヨモギ属の旅は続きます。
植物名 | ヨモギ |
漢字名 | 蓬 |
別名 | モチグサ、ダンゴグサ、モグサなど |
学名 | Artemisia princeps |
英名 | Japanese mugwort(wormwood) |
科名・属名 | キク科ヨモギ属 |
原産地(分布) | 日本、朝鮮半島 |
花期 | 8~10月 |
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