フジバカマの香りとヒヨドリバナ属、アサギマダラの旅

フジバカマは乾燥させると良い香りがします
フジバカマは乾燥させると良い香りがします。

先々月(8月)、アサギマダラの好きな花と植物について記事にしました。

その際、Instagramでコメントをいただき「フジバカマの香り」について、話題になりました。

今回はそんなフジバカマやヒヨドリバナが本当に香るのか、実験してみました。

フジバカマが香るのは乾燥した葉や茎

乾燥させたフジバカマの葉
乾燥させたフジバカマの葉。

フジバカマは、植わっている状態、生草のままだと香りません。

しかし、乾燥させると桜餅のような良い香りがします。

特に、大きめの葉が香ります。

吊るしてから香りは徐々に変化

今回、フジバカマを吊るして乾燥させてみましたが、最初の3日間くらいは少し青臭さがありました。

その後、1週間くらいすると、徐々に青臭さがなくなり、爽やかなサクラの葉の香りに変化しました。

桜餅のようでもあり、シナモンやバニラのような香りも感じられます。

香り成分はクマリン

フジバカマの香りの元は、クマリンという成分です。

セリ科やミカン科、マメ科、キク科などの植物に多く含まれる成分で、塩漬けにしたり、乾燥させる事で生成される成分です。

わかさ生活のサイトの解説文を少し引用します。

クマリンは塩漬けにしたり、干したりすることでクマリン配糖体を含む細胞が死に、クマリン配糖体が分解されることではじめて独特の香りを放つことができます。

「わかさの秘密」(わかさ生活)「クマリン」

仲間のヒヨドリバナの香りは弱い

手前はフジバカマ、右側(奥)はヒヨドリバナ
手前はフジバカマ、右側(奥)はヒヨドリバナ。

今回、フジバカマと共にヒヨドリバナ(同じヒヨドリバナ属の仲間)も同じ条件で乾燥させてみたのですが、似た香りはあるものの、香りは弱いです。

個体差はあるのでしょうが、ヒヨドリバナ属の中でも、特にフジバカマは強く香るのだと思います。

「令和」の出典・万葉集の“蘭”はフジバカマ

フジバカマのドライフラワー
室内で吊るす場合、花の部分はカットしておいても良さそうです(綿毛が落ちます)。

このフジバカマの香りは、元号の「令和」の出典である万葉集の文章にも登場します。

初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす

※「万葉集」の梅花の歌、三十二首の序文

この「蘭」は、現在のランの事ではなく、フジバカマを指し、蘭とは香りの良い植物の総称なのだそうです。

※詳細については「JBpress」の記事『令和の出典に登場する「蘭」、歌人が見た景色とは?』が参考になります。

フジバカマは奈良時代に中国から伝来

フジバカマは奈良時代に中国から日本に伝わったとされます。

梅の木も、同じ頃に中国から日本に伝わったんですよね。

万葉集で詠まれた時、フジバカマもウメも、中国(唐)への憧れからくる、最新の流行の一つだったのでしょう。

準絶滅危惧種ながら植栽で人気のフジバカマ

アサギマダラとヒヨドリバナ
アサギマダラとヒヨドリバナ。

万葉の時代から令和へ。

フジバカマは秋の七草にも選ばれていますが、今では準絶滅危惧種です。

今回のフジバカマも、ご近所さんの植栽のものを分けていただきました(ヒヨドリバナは我が家の敷地内のものです)。

ヒトの手による植物の旅

植物の旅というのは面白いもので、絶滅危惧種であっても、ヒトの手によって植えられ、庭の花や植栽として、フジバカマは人気です。

アサギマダラを呼ぶ為にフジバカマを植えよう、というヒトもたくさんいます。

こうして、香りを嗅いでいると、そんなフジバカマが旅してきた時間と、植物(&蝶)がヒトに与える影響の不思議を感じます。

アサギマダラとヒヨドリバナ

アサギマダラとフジバカマの旅

ドライにしたフジバカマをキャニスターに
ドライにしたフジバカマをキャニスターに入れてみました。

ともあれ、今頃アサギマダラは西日本や沖縄、台湾に向けて旅しているはずです。

花期が終わったら、フジバカマを乾燥させて、その香りを体験してみるものオススメです。

桜餅のようでもあり、ちょっとシナモンのようでもある、その香りを嗅いで、サシェ(香り袋)にするのも、良さそうです。

植物名フジバカマ
漢字名藤袴
別名ランソウ(蘭草)、コウソウ(香草)
学名Eupatorium japonicum
英名Thoroughwort
科名・属名キク科ヒヨドリバナ属
原産地東アジア
花期8~10月
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しょうじ(Shoji)
神戸出身、2016年に信州の山奥に移住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。