先日、スーパーに行ったら、節分に合わせて柊鰯(ひいらぎいわし)を紹介するポスターが掲示されていました。
その横にはイワシや、イワシのフライが。
節分豆の袋にはヒイラギのイラストが入っていたり。
そんなこんなで、今回はヒイラギという植物について、記事にしてみます。
節分と柊鰯(ひいらぎいわし)、ヒイラギという「冬の木」
節分にヒイラギが(イワシと共に)飾られるのは、何故でしょうか?
『都会の木の花図鑑』から少し引用します。
(ヒイラギの葉の)鋭い刺は動物に食べられないための防衛手段。この鋭い刺が邪気を祓うと考えられ、庭に植えたり家の門戸に小枝を立てる風習があった。2月の節分にヒイラギの枝とイワシの頭を門戸に飾るのも同じ理由から。
『都会の木の花図鑑』石井誠治
そんなヒイラギ、漢字では柊(もしくは疼木)。
木に冬、と書くように確かに冬の木の印象が強いです。
日本のヒイラギとクリスマスの(西洋の)ヒイラギは別種
しかも、冬の木の印象が最も強いのは、(現代では)クリスマスではないかと思います。
実際には、日本のヒイラギはモクセイ科なのに対して、クリスマスのヒイラギ(西洋ヒイラギやヒイラギモチ)はモチノキ科です。
植物学的には別種なのですが、現在はクリスマスのヒイラギも節分のヒイラギも、同じように扱われる場合が多いようです。
クリスマスの西洋ヒイラギはキリストのイバラの冠と血
以前の記事『クリスマスのヤドリギやモミの木、6つの聖なる植物の旅』で書いたとおり、クリスマスの西洋ヒイラギはキリストのイバラの冠と血を表します。
日本のヒイラギは赤い実ではなく、黒い実をつけるので「キリストの血」の代用にはならないかもしれませんが「イバラの冠」としては特徴的には同じです。
ヒイラギの名前の由来は「疼ぐ(ひいらぐ)」=ひりひり痛む
葉を触ると「疼ぐ(ひいらぐ)=ひりひり痛む」がヒイラギのネーミングの元だそうですが、西洋ヒイラギも日本のヒイラギも、その葉のトゲが印象に残る植物なんですよね。
ちなみに、ヒイラギは老木になると葉のトゲ(鋸歯)はなくなる傾向にあるそうです(上の写真参照)。
いずれにせよ、日本のヒイラギも西洋のヒイラギも、防衛手段であった刺によってヒトには魔除けの木として扱われてきた、という共通点は面白いですよね。
椿榎楸柊桐(春夏秋冬の木)
今回、この記事を作成するにあたり「椿榎楸柊桐」という歌の事を知りました。
「春つばき 夏はゑのきに 秋ひさぎ 冬はひひらぎ 同じくはきり」と読むそうです。
江戸時代の『小野篁歌字尽』(おののたかむら うたじづくし)という本で紹介されている、漢字の覚え方(読み方)の歌です。
暮らしの中の樹木
この「椿榎楸柊桐」という5種類の樹木は、かつてはもっとヒトの暮らしに近い存在だったと思います。
そんな中、ヒイラギというのは、西洋文化の影響によってまた別の存在感を持つようになっている樹種なのかなと思います。
信州の節分はヒイラギではなく、クロモジの地域も
節分をきっかけにして、ヒイラギという植物について書きましたが、最後に信州らしい話しを一つ。
『信州歳時記366日』という本によると、信州の伊那ではヒイラギではなく、クロモジの木の先に魚の頭を刺し、これを松葉でいぶしてから入口に飾る、という地域もあるそうです。
クロモジはとても良い香りがするので「なるほど!」と思います。
やはり行事というのも、地域性がありますね。
来年の節分は、我が家は柊鰯をクロモジの仲間の木、ダンコウバイで飾ってみようか、などと想像します。
柊から椿へ、春を感じる植物
節分を経て春へ。
ヒイラギの冬から、ツバキの花を見て感じる春もあれば、梅の花や桜、モクレン、ミモザなんかも、春を感じさせてくれます。
それぞれの地域やヒトにとっての、春の花や木がありそうですね。
まだ寒いですが、いろんな花が咲き始めるのを楽しみに、冬を越しましょう。
※昨年、節分豆について『落花生と節分【長野県は大豆ではなく落花生】』という記事を作っています。
植物名 | ヒイラギ |
漢字名 | 柊、疼木 |
別名 | ひらぎ、鬼の目突き |
学名 | Osmanthus heterophyllus |
英名 | Holly olive |
科名・属名 | モクセイ科モクセイ属 |
原産地・分布 | 日本、台湾 |
花期 | 11~12月 |
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