今回は、福寿草(フクジュソウ)の花言葉やネーミングについて、韓国ドラマや小林一茶の俳句も紹介しながら、書いてみたいと思います。
福寿草の花言葉とネーミング
福寿草の花言葉は「幸せを招く」「永久の幸福」の他に「悲しき思い出」(英語でsorrowful remembrance)というものもあります。
春を告げるめでたい花であったり、毒に気をつけないといけない植物であったり、その印象は地域や環境、状況によって変わるんですよね。
韓国ドラマの『福寿草』(スプリング・エフェメラルのイメージ)
韓国ドラマに『福寿草』という作品があります。
見出しを少し引用します。
寒さに耐え氷を突き破り咲く福寿草のようなヒロインの、愛憎に満ちた復しゅう劇!
※BS朝日の紹介ページより
確かに、まだ寒い時期から咲く福寿草には、そんな力強さみたいなイメージもあります。
フクジュソウに続いて、カタクリなどが咲いていきますが、それらは「スプリング・エフェメラル」と呼ばれる、寒い時期から咲く花たちです。
※韓国ドラマ『福寿草』はU-NEXTにて視聴できます(31日間無料・2022年4月現在)。
英語ではアムール川のアドニス
英語ではAmur adonis=アムール川のアドニス。
シベリア東部に分布するアドニス、という名付けです。
元々、アドニスはギリシャ神話の美少年の名前だそうです。
猪に付き殺され、流れた血からアドニスの花が生えた、との事。
その後、アドニスはアネモネの花を指すように変わっていったそうですが(ややこしいので詳細は省きます)、いずれにしても、前述の花言葉「悲しき思い出」もそうですが、西洋の福寿草のイメージは、めでたいものではなさそうです。
そして、西洋では福寿草は黄色ではなく、赤色のイメージなんですね。
小林一茶が貧乏草と呼んだ白い花
西洋の「赤色」の他にも、園芸種がいろいろあって、白色の福寿草もあります。
小林一茶のエピソードを『ひねくれ一茶』から引用しつつ、紹介します。
客人に、狭くて汚い部屋(貧乏暮らし)を指摘され、小林一茶は言います。
「おれのうちで福の名のつくなあ、あの福寿草だけだ。この頃、江戸にはやってるんでおれも欲しくなってな、一本買ってきて植えたんだが、一向、山吹色に咲かねえのよ。貧乏ったらしい、灯芯みたいな白い花になりやがって、けったくそ悪いから貧乏草と名を替えてやった。
薮並や貧乏草も花の春
ってところだ」
『ひねくれ一茶』田辺聖子
ついでに、貧乏だった一茶ならではの句をもう二つ。
袖口は去年のぼろなり梅の花
福寿草の花期は、ウメの花とも重なりますね。
欠け鍋も旭(あさひ)さすなりこれも春
「欠け鍋」は、春の到来と合わせる事によって、貧乏という悲壮感がありません。
話しが逸れましたが、一茶にとって福寿草は、江戸の流行への抵抗のようなものもあったのかな?とも思います。
俳人の植物や季節に対する視点に感心させられる、田辺聖子さんの『ひねくれ一茶』、オススメです。
花の名前と花言葉、ヒト
花の名前や花言葉というのは、ヒトが付けたものであって、福寿草であれアムール・アドニスであれ、ヒトの捉え方が表れていますね。
雪解けした時の嬉しさとか安堵感みたいなものは(シベリアも信州も)、寒冷地に住むヒトには共通だろうと思います。
同様に、違う地域の季節や別の時代を想うのもまた、ヒトの捉え方だと思います。
信州の山奥で福寿草が咲いている頃、麓はサクラの季節です。
最後にもう一つ、一茶の句を。
大名を馬からおろす桜かな
植物には、いろんな力がありますね。
※今年(2020年)は、四賀地区の福寿草まつりのイベントが中止される等、信州でも新型コロナウイルスの影響があります。不安な花見の季節になってしまいましたが、来年の平和な春を願って、今を乗り切りたいですね。
植物名 | フクジュソウ |
漢字名 | 福寿草 |
別名 | 元日草(ガンジツソウ) |
学名 | Adonis amurensis |
英名 | Amur adonis |
科名・属名 | キンポウゲ科フクジュソウ属 |
原産地 | 東アジア |
花期 | 2~4月 |
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