ジャパニーズオークの森(国産材としてのミズナラ)

ミズナラの新緑
ミズナラの新緑。

家具の木材としてよく耳にする「オーク(oak)」。

これは、ヨーロピアンオークやホワイトオーク等の樹木を指します。

世界各地のブナ科コナラ属の落葉広葉樹の総称として使われている言葉で、特定の一つの樹種を指すのではありません。

日本国内では、ミズナラやコナラが同じ仲間の樹木になります。

世界各地で崇められてきたオークの木

コナラの芽吹き
コナラの芽吹き。一般的には、里山に多いのはコナラです。標高が高くなるとミズナラの植生になります。

古くから、ヨーロッパではオークの木は神聖視されてきました。

寿命が長く巨木になり、材木として硬くて耐久性があり、秋にはドングリを実らせ、食料にもなる。

そのような特徴が樹木信仰にも繋がっていったのでしょう。

古代ギリシャやケルトのオークの木

ミズナラの新緑
新緑の季節、ミズナラの葉を透過する陽の光は優しいです。

古代ギリシャでは世界に最初に生えた木がオークの木で、人間はオークの木から生まれたとされていたようですし、ケルトではドルイド教の象徴としてオークの木が崇められていたと言います。

「扉を開きなさい」と、オークの精霊は告げる。
人生の途上、私たちの目の前には突然、運命の扉が現れる。それはチャンスへの扉であり、新たな旅立ちへの扉。もしもあなたが中へ入りたいならば、扉に歩み寄り、チャイムを鳴らさなければならない。
~中略~
心から望むことは、自ら行わなければ何事も変わらない、とオークは教えている。

『古代ケルト 聖なる樹の教え』杉原 梨江子(2009年)より

世界各地の「ロイヤルオーク」

イタリア共和国の国章
イタリア共和国の国章は左にオリーブ、右側にはオークの枝が配置されています。

現在でも、イタリアやエストニアの国章にオークの葉が描かれていたり、イギリスやアメリカ等、各地に「ロイヤルオーク」という地名があります。

日本のオーク=ナラの木は雑木

ミズナラのドングリ
ミズナラのドングリ。落下すると先端から根を出して、冬を越します。

日本では、こうしたオーク=ナラの木への信仰はありません。

材木として計画的に植樹されてきたのはスギやヒノキといった針葉樹であり、ナラの木のような広葉樹は雑木林の木でした。

薪や炭用に10年~30年単位で伐採されてきました(石油への燃料革命によって薪炭産業の状況は変わりましたが)。

日本製のオークの家具の材料のほとんどが外国産を使っているのもこれが主な理由です。

ドイツやアメリカ(少し前ならロシアも)のような、家具にも使えるような大きなナラの木を安定的に供給できる体制は現在の日本にはありません。

ジャパニーズオークのウイスキー

シーバスリーガル・ミズナラ
シーバスリーガルからも、日本のミズナラ樽を使ったウイスキーが発売されています。

しかし、北海道産のミズナラがMizunara=ジャパニーズオークと呼ばれ、その品質が世界で称賛されています。

かつては家具の材料としても輸出されていましたが、現在はウイスキーが有名です。

「山崎ミズナラ」は限定生産で1本10万円。シーバスリーガルからも「MIZUNARA」が販売されています。

水分を多く含む形質を表した「水楢」という名前に、オーク共通の特徴を見て、世界の人々も頷いているでしょうか。

寒冷地ならではの良材

ミズナラの黄葉
ミズナラの黄葉。落葉広葉樹の中で、シーズンの遅くまで落葉せずに残っている事が多いのがミズナラやブナの葉です。

北海道の大自然と共に残されていたミズナラの巨木は現代の僕たちに何かヒント与えてくれている気がします。

本州でも、標高の高い場所、例えば信州の山間部ではミズナラは普通に生えます。

寒冷地なので年輪が詰まり、北海道と同じように良材になるのではないでしょうか。

ヨーロピアンオークやホワイトオークを輸入するどころか、家具の材料として輸出する事も出来るようになるかもしれません。

ジャパニーズオークの森

ミズナラの枯葉
ミズナラの落ち葉に雪がパラパラと。

100年後、200年後の日本はどんな国でしょうか。

きちんと管理された、巨木が茂るオークの森が各地にある事を想像します。

ヨーロッパで「最も強い木」「最高の木材」「聖なる木」とされてきたオークが、日本で同じようにならない理由はないのです。

植物名ミズナラ
漢字名水楢
別名オオナラ
学名Quercus cuspidata
英名Japanese oak(特に北海道産のミズナラ)
科名・属名ブナ科コナラ属
原産地日本
花期4~5月
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しょうじ(Shoji)
神戸出身、2016年に信州の山奥に移住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。