トチノキと銀座マロニエ通り

トチノキの黄葉

先日、Apple銀座に行く用事があって(iPhoneのバッテリー交換)、銀座に出かけました。普段は行かないエリアだけど、ふと思い出したのが「銀座マロニエ通り」。
ずっと、トチノキについても記事にしたくて、信州の山の中のトチノキと西洋トチノキの対比ができればと考えていたので、ちょうど良い機会なのではないかと。トチノキの近縁種、マロニエ(セイヨウトチノキ)が欧州の都市文化の一部である事は興味深く、銀座でその雰囲気を撮影できるのであれば、と考えたのです。
パリのシャンゼリゼ通りや、文学ではサルトルの『嘔吐』、『アンネの日記』。アンネが隠れ家から眺めていた「マロニエの木」は特に有名です。

アンネの日記 増補新訂版 (文春文庫) [ アンネ・フランク ]
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ところが。カメラを首から下げて、銀座マロニエ通りの端から端まで歩き、いろんな角度から撮ってみたのですが、どうも上手くいかない。事前にインスタで他の人の写真を見て予習もしていったつもりだったけど、自分が納得できる写真は撮れませんでした。

黄葉するトチノキの大きな葉

秋の穂高連峰

信州の秋。カラマツの黄葉が目立ちますが、様々な樹種の黄葉を楽しめます。向こう側は穂高連峰。

信州に戻ると、秋の黄葉が見事です。カラマツ林のオレンジ色が目立ちますが、林内に入ると、様々な樹種の黄葉・紅葉があって、その中でもトチノキは葉が大きく、迫力があります。大きな葉で似た樹種としてはホオノキがありますが、葉の付き方が違います。ホオノキは偽輪生といって、まるで輪生のように見えるけれど、実際には独立した別々の葉が輪状に見える葉です。

秋のホオノキ

こちらはホオノキ。葉は40㎝にもなるほどの大サイズ。以前の「モクレン科」の記事で少し紹介しています。

それに対してトチノキは賞状複葉といって、手のひらを広げたような葉の付き方で、カエデのような1枚の葉の切れ込みが深くなって(進化によって)、別々の葉のように見えて、1枚の葉です。

山のトチノキは四季を通して被写体に

トチノキの新緑

トチノキの新緑。他の樹木に先駆けて芽吹き、傘が開くように広がっていく葉を眺めるのも春の楽しみです。

そんなトチノキ、春の新緑も見どころです。信州では巨木も多く、下から見上げると黄緑色の葉が空いっぱいに拡がって、圧巻です。そして秋は黄葉、栃の実。見た目がコロンとして、可愛いです。

栃の実

栃の実。こちらの写真は前回の記事(鳥居峠)のものです。

トチノキの冬芽

トチノキの冬芽。触るとペタペタして、滑り止めゴムシートのような感触です。

冬は、大きくて目立つ冬芽。カラマツの枯葉がくっついていたり、雪の中でも面白い被写体になってくれます。落葉した樹形の観察も冬ならではです。巨木を見ると、絵本『モチモチの木』を思い出します。

モチモチの木 (創作絵本) [ 斎藤隆介 ]
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昨年、インスタのコメントで教えていただいて、読んでみたらスゴく良くて、お気に入りの絵本になりました。作中のトチノキのシルエットとか自然の中の闇の怖さが主人公の豆太の優しさと勇気を引き立てていて、大好きなテーマです。

トチノキの巨木

落葉したトチノキの巨木。こちらの写真も前回の記事(鳥居峠)のものです。

銀座マロニエ通りの樹々の環境について

銀座マロニエ通りで、写真を上手く撮れなかったのは、僕の技術や準備の不足もあるだろうし、環境的な難しさとして、ビルに囲まれ、狭い空間に植樹された樹々をカメラに収めにくい、という事情もありました。

ヨーロッパでは、街路樹としてはプラタナスやセイヨウトチノキが、通りに木陰を作る役割を担っています。のびのびと育った樹形は美しく、ヒトにとっても樹々にとってもストレスがない状態だと感じます。
過去の記事『プラタナスの並木』でも書きましたが、日本の都市景観における街路樹の歴史は過渡期にあります。

10年後か20年後、僕が銀座に行く動機や理由が何だろうかと想像した時、iPhoneのAppleか、GINZA SIXか、歌舞伎座か、どれも確かではありません。お店や、街の風景、僕たちが手にする本やデバイスの形式も、時代とともに変わっていきます。しかし、マロニエ通りの樹々(実際にはトチノキとベニバナトチノキが多いようです)は、僕たちが知らない単位の時間を生きています。

トチノキの葉

トチノキの葉。こちらは新緑、春の光を透過させて、葉脈もはっきり見えます。

自分が何か役に立ちたいと考えたら、アンネの言葉を借りれば「わたしの望みは、死んでからもなお生き続けること!」と唱えて行動する事で、「アンネの木」も豆太の「モチモチの木」も、ずっと残っていくのだろうし、それは僕たち自身の可能性でもあります。
10年後か20年後か、僕たちはスマホとは全く別のデバイスを身に着けて、マロニエ通りを歩いているでしょう。その時、樹々が今よりももっと大切な存在になっている事を願います。
ひとまず、僕は次の春、再びマロニエ通りに出向いて、ベニバナトチノキの花の写真を撮りに行こうと思います。再チャレンジです。

植物名 トチノキ
漢字名 栃ノ木
別名 ウマグリ
学名 Aesculus turbinata
英名 Japanese horse chestnut
科名・属名 ムクロジ科トチノキ属※旧分類ではトチノキ科
原産地 日本
花期 5~6月
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ABOUTこの記事をかいた人

神戸出身、2016年から信州在住。植物のある生活、自然の中での生活について、このサイト(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。2019年~イタリア・トリノの自転車ブランド・3Tアンバサダー。