コシアブラの木【ウコギ科の味と四季】

コシアブラの若芽
芽吹いたばかりのコシアブラ。

信州では山菜として大人気のコシアブラですが、林内に佇む姿や秋の黄葉など、四季を通して楽しませてくれる植物でもあります。

また、材木としてもその白さを生かして木彫玩具が作られたりする樹木でもあります。

今回は、仲間のウコギ科の植物も絡めながら、コシアブラについて紹介します。

コシアブラの木の芽吹き、ウコギ科の山菜の春

収穫したコシアブラ
収穫したコシアブラ。

春、樹々が芽吹き、山菜の本格シーズンがやってきます。

タラの芽(タラノキ)、コシアブラ、ハリギリ。

少し遅れてウド。

これらは全てウコギ科の植物で、味も共通するものがあります。

若芽を天ぷらやパスタ、山菜ご飯に

山菜ご飯
コシアブラの山菜ご飯。

全部美味しいですが、我が家の一番のお気に入りはコシアブラ。

香りが最も強く、ウコギ科らしい苦味もしっかり味わえます。

天ぷらはもちろん、炒め物やパスタ、山菜ご飯にしても美味しいです。

植えられているタラノキ、林内を好むコシアブラ

林内に自生しているコシアブラ
林内に自生しているコシアブラ。

タラの芽はスーパーマーケットでよく売られています。

食用にする為に庭に植えられている事も多く、信州では豊富に出回っている印象です。

コシアブラはそうではありません。

スーパーマーケットでは見かけないし(道の駅では見かけます)、地元の人も庭で収穫するものではなく(タラの芽のように)、山に入って採取するのが普通だと思います。

そうした特徴も、我が家が好きな理由の一つでもあります。

あと、タラノキには刺がありますが、コシアブラには刺がないので、採取や調理もしやすいですね。

コシアブラは5枚の掌状の葉

コシアブラの葉
コシアブラの葉。

春が終わり、完全に開いたコシアブラの葉は、5枚の小葉が中心から分かれて出る形(掌状複葉)になります。

縁には細かいギザギザ(鋸歯)があり、先端は尖ります。

ウコギ科の花の夏

ウドの花
こちらはウドの花。

ウコギ科の植物の花は、たくさんの小さな花が放射状に咲き、線香花火のようです(散形花序)。

ウドは林縁に多く、背が低い(高くても2mくらい)ので、花の観察も容易です。

ちなみに、山菜としてのコシアブラの若芽の季節は短いですが、ウドは次々に芽が出てきて、夏まで若芽を食べられる上に、果実も食用にされます。

紅葉、黄葉ではなく白葉(?)のコシアブラの秋

白っぽく黄葉したコシアブラの葉
白っぽく黄葉したコシアブラの葉。

秋、カラマツ林が黄葉する頃、コシアブラの葉は色が抜けて、独特な色を見せてくれます。

多くの樹々の葉はアントシアニンやカロチノイドなどの赤や黄色の色素が出てきて紅葉・黄葉しますが、コシアブラは色素をあまり作らないのか白っぽい黄葉で、秋の楽しみの一つでもあります。

コシアブラの名前の由来

下から見上げたコシアブラの木
下から見上げたコシアブラの木。

コシアブラを漢字で書くと「漉油」。

「油を濾す」が由来です。

樹脂液を漉して塗料にされてきました。

また、ゴンゼツ(金漆)という別名もあり、この塗料にたとえたものだそうです

コシアブラの別名・地方名

コシアブラの樹皮
樹皮はなめらかで、ブナの木などに似ています。

ゴンゼツの他にも、コシアブラの別名や方言(地方名)がいろいろあります。

長野県だけでもアブラボウ、ソラッポ、トウフノキ、ナマドウフ、といった名前があります。

「豆腐の木」については、幹や枝が柔らかくて白いというコシアブラの特徴を捉えた名前なのでしょう。

名前というのは植物に対しての見方が現れていて面白いです。

他の地域の地方名についても、後述します。

材木としてのコシアブラ

コシアブラの樹皮
地衣類の付着も多い、コシアブラの樹皮。

山菜として有名なコシアブラですが、材木としても使われています。

北海道ではアブラホオと呼ばれ、ホオノキの代用として使われている他、山形の木彫玩具の材料にもなっています。

『樹と暮らす 家具と森林生態』から少し引用します。

米沢では鷹の彫り物「お鷹ぽっぽ」をコシアブラで作る。そして神社に奉納している。鋭利な小刀一丁で彫り上げ、笹野一刀彫といわれる。80過ぎの古老に聞いたら、コシアブラは白味が売りなので、材は生育場所を選んでとってきたという。

『樹と暮らす 家具と森林生態』清和 研二, 有賀 恵一
コシアブラの枝の切り口(白いです)。
『樹と暮らす(家具と森林生態)』清和研二, 有賀恵一

コシアブラの冬芽とウサギカジリ

コシアブラの冬芽
コシアブラの冬芽。

ヒトがコシアブラを食べるのは春ですが、冬に食べる生物もいます。

野ウサギです。

積雪によってちょうど良い高さになった冬芽をウサギがかじるのです。

「ウサギカジリ」という地方名(新潟など)もあり、雪深い環境を想像しますね。

ウサギの冬とヒトの春、山菜の味

カラマツ林の中でコシアブラ採り
カラマツ林の中でコシアブラ採り。

ウサギが喜んで冬芽をかじる季節から遅れること数か月。

雪解けし、カラマツ林が芽吹き、春の到来と共に我々はコシアブラを食します。

ウサギたちにとっては積雪期しか届かない高さのコシアブラの芽も、我々ヒトは採取できます。

そんなありがたみも感じながら、山菜を味わう春。

巡る季節に思いをはせると、コシアブラとウコギ科の山菜の短い春は一層美味しく感じます。

ウコギ科の山菜料理についての記事も作りました。

信州の山菜料理、うど汁
植物名コシアブラ
漢字名漉油
別名アブラボウ、ソラッポ、トウフノキ、ナマドウフ、ウサギカジリなど
学名Acanthopanax sciadophylloides
英名なし
科名・属名ウコギ科ウコギ属
原産地日本
花期8月
広告
広告

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
しょうじ(Shoji)
神戸出身、2016年に信州の山奥に移住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。