オミナエシの黄色い花を見ると、信州の高原の、短い夏の終わりを意識します。
秋の七草の一つですが、地域によっては準絶滅危惧種(生育条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種)に指定されています。
この記事では、そんなオミナエシと秋の七草について書きます。
秋の七草の覚え方「お好きな服は」
春の七草のように七草粥で食べたりせず、野の花として観賞する植物達なので、あまり身近ではなくなってきている気がします。
そこで、語呂合わせで覚える方法の一つが「お好きな服は」。
桔梗も絶滅危惧種(!?)
しかし、こうして見ると、7つのうち後ろに*マークを付けた4つの植物は地域によっては絶滅危惧種もしくは準絶滅危惧種に指定されています。
オミナエシやキキョウなんて、頻繁に見かけるので意外な気もしますが、よく考えると多くが庭や植栽であって、自生は少ない事に気づきます。
外来種の増加、植生の変化
秋の七草だけでなく、山の中で生活している者の実感として、やはり植生は大きく変化しています。
観察していて、目につく草花のは多くが外来種。
僕が生活する信州・松本市の山奥、奈川という地区は標高1000m~1500mの山間部です。
1998に発行された『奈川村の植物』(奥原弘人著)という本の内容と現状を比較すると、この20年だけでも植生が変化している事がわかります。
ススキとハギ(ヤマハギ)、クズはよく見かけます
秋の七草については、前述の4種を除くとススキとハギ、クズに関しては、今のところよく見かけます。
逆にクズは旺盛な繁殖力のせいで駆除されたりしています。
侵略的外来種として海外でも問題になっているほどです。
気温の急激な上昇
外来種ともう一つ、植生の変化に影響を与えているという実感があるのは気候の変化です。
奈川には野麦峠スキー場というスキー場がありますが、約30年前、12月上旬には営業を開始していました。
今、12月下旬にやっとオープンできるかどうか、というくらい積雪期が短くなっています。
最低気温はマイナス20℃になる事が度々あった30年前、今ではマイナス15℃程度です。
夏場の最高気温は昔、28℃で「今日は暑いな~!」と言っていたのが、今では30℃も珍しくありません。
夏が長くなった影響で、虫が出る時期が分散して、印象としては虫が少なくなりました。
3000m級の高山に行くと、短い夏に集中してアブが大量に発生したりしますが、この辺りは昔、それと似た状況だったのが、今では「普通」になってきています。
これからもオミナエシは女郎花か
これからの20年、30年を想像すると、目の前に咲いている花を眺める、この時間の大切さを感じます。
オミナエシが庭先に咲いているのを見て、いいなあと思う感覚は、やはり日本人です。
牧野富太郎博士は『植物一日一題』の中で「日本の草や木の名は一切カナで書けばそれでなんら差し支えなく、今日ではそうすることがかえって合理的」と書いていますが、女郎花。
この花は漢字もしっくり来る気がします。
女郎花から次々に咲いていく秋の花を楽しみに、冬支度を。
植生の変化と共に、僕たちの文化的アイデンティティもまた変わっていくのかも知れません。
第6の絶滅期と言われる現代、こうした記事も作っていこうと思います。
植物名 | オミナエシ |
漢字名 | 女郎花 |
別名 | 粟花(アワバナ)、思い草(オモイグサ)など |
学名 | Patrinia scabiosaefolia |
英名 | なし |
科名・属名 | オミナエシ科オミナエシ属 |
原産地 | 日本、東アジア |
花期 | 8~10月 |
お(オミナエシ : 女郎花*)
す(ススキ : 薄)
き(キキョウ : 桔梗*)
な(ナデシコ : 撫子*)
ふ(フジバカマ : 藤袴*)
く(クズ : 葛)
は(ハギ : 萩)