カエデの仲間は、翼果(よくか)と呼ばれる翼状の果実をつけます。
プロペラのような形状で、少しでも滞空時間を長くして、親の木から離れた場所に種を飛ばす、植物の戦略です。
この記事では、いくつかのカエデの仲間の翼果の写真と共に、日本の代表的なカエデ=イロハモミジについて、カエデとモミジとの違い、カエデの花や歴史も交えながら、紹介します。
世界のカエデ、日本のモミジ
イロハモミジを外国人に説明するとしたら?
イロハモミジという単語を外国人に説明するとしたら「イロハ」と「モミジ」について説明する事になるでしょうか。
まず「イロハ」。
手のひら型に裂けた葉の先を「イロハニホテト」と数えた事が名前の由来で、英語だと「ABCDモミジ」のようなものだと説明するのがわかりやすいかも知れません。
「モミジ」はどうでしょうか。
カエデ=Mapleの一部を日本語では特別に「モミジ」と呼ぶのだと説明する事になるでしょう。
紅葉(こうよう)と書いてモミジとも読む事や、紅葉狩りの風習についての説明も必要かも知れません。
こうして整理すると、日本語には植物や自然を表す表現が豊かである事を実感します。
植物学ではモミジもカエデも同じ
植物学では、モミジとカエデは区別しません。
区別するのは園芸や盆栽の世界で、やはりモミジは日本の文化なのです。
カエデの仲間は世界に150~200種ありますが、日本で「カエデ」は「カエル(蛙)の手のような形」が名前の由来です。
カエデの葉のデザインと言えば、カナダの国旗が有名ですが、カナダのメープル(サトウカエデ)からはカエルの手はイメージしにくいですね。
日本のカエデの方が葉の裂け方が手の形(掌状)に近いようです。
※カエデとモミジの葉についての記事も作っています。
江戸時代、鑑賞用としてのモミジの開発
モミジを鑑賞する日本の風習は、古くは万葉集に紅葉(黄葉)についての歌がある事から、少なくとも約1200年前(奈良時代)から続いている事になります。
元々は中国の影響を受けた風習ですが、江戸時代にはたくさんの園芸種が作られます。
カエデの中でも、5つ以上に切れ込みが入る掌状のものがモミジ品種とされたのも江戸時代からです。
春から秋まで紅葉が続くノムラモミジといった園芸種が開発されたり、当時も紅葉の人気は高かったのでしょう。
目立たない、カエデの仲間の花
カエデの仲間は、花粉媒介を虫ではなく風まかせなので(風媒花)、花は目立ちません。
しかし、よく見てみると繊細な形をしていて、いろんな種類を見比べてみたくなります。
信州の山間部だと、ウリハダカエデやハウチワカエデ、イタヤカエデの花などが見どころでしょうか(下記記事でカエデの花について紹介しています)。
カエデの歴史(北半球に拡がるカエデの分布)
約6千万年前、カエデの祖先が誕生した時代はユーラシア大陸やアメリカ大陸が地続きでした。
その後の大陸の分離によって各地のカエデはそれぞれに進化していきますが、日本のカエデはヒトに愛された事によって特に植生を拡げたと言えるでしょう。
秋に真っ赤に染まる風景は、風の力ではなく人の手によって作られたものです。
プロペラではなく、ヒトによって分布を拡げるカエデ
より遠くへ。
プロペラによって北半球に拡がったカエデ達は、落葉前の葉の色によってヒトに選ばれる事を想定していたでしょうか。
1000年程度の時間はカエデにとっては一瞬の出来事で、まだまだ評価すらできない繁殖方法なのかも知れません。
今も模索しているはずです。
より遠くへ行く方法を。
植物名 | イロハモミジ |
漢字名 | 伊呂波紅葉 |
別名 | タカオカエデ、イロハカエデ |
学名 | Acer palmatum |
英名 | Japanese Maple |
科名・属名 | ムクロジ科カエデ属 |
原産地 | 日本 |
花期 | 4~5月 |
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