神戸の春。
街路樹にたくさんの白い花が咲きます。
阪神淡路震災復興支援10年委員会(実行委員長・安藤忠雄さん)の成果です。
震災後、被災地を白い花でいっぱいにする活動として、30万本以上の花木が植えられました。
兵庫県にはたくさんの安藤建築がありますが、この白い花も安藤さんの偉大な仕事の一つでしょう。
3月の神戸でよく目にするハクモクレンとコブシ
3月、よく目にするのはハクモクレンとコブシです。
ハクモクレンの方が少し早く咲き始め、遅れてコブシが開花し、春が進みます。
どちらも全国の街路樹や庭木として、芳香と共に冬の終わりを知らせてくれます。
まだ周りに緑が少ない季節、大きな花はよく目立ちます。
大きくて目立つモクレン科の花
「モクレンとコブシの違い、見分け方は?」という記事がたくさんありますがそれもそのはず、どちらもモクレン科モクレン属なので同じ仲間です。
他にはタイサンボク、ホオノキ、ユリノキもモクレン科の仲間です。
古い形態を残しているモクレン科
これらの植物に共通するのは花も葉も大きい事。
コブシやホオノキは日本にも自生する植物で、モクレンは中国、タイサンボクはアメリカ原産です。
世界各国で存在感を放つ、これらの花が何故大きいのか?
それは地球上で最も古い形態を残した花という事とも関係しています。
恐竜の時代に咲いた初めての花
私たちが観賞する花(一般的な意味で)は全て被子植物です。
被子植物とは、簡単に言うと花びらがある花を咲かせ、昆虫や鳥などに花粉を運んでもらう植物です。
およそ1億3000万年前、恐竜が繁栄していた時代。
“見て・嗅ぐ花”という画期的な特徴を持って生まれてきた植物、それが被子植物です。
それまでの植物(裸子植物)も花を持ってはいますが(専門的な意味で)目立たない花で、花粉を運ぶ方法は風任せでした(風媒花)。
裸子植物の花のわかりやすい例としては、スギの花でしょうか。
風媒花から虫媒花への大進化
スギの花を(一般的な意味で)、観賞する人は少ないと思います。
1億3000万年前の白亜紀、花と言えばスギの花のような地味な花しかなかったところに(見かたによっては派手かも知れませんが)、色鮮やかで良い香りのする、大きくて目立つ花(被子植物)が生まれました。
花粉の運び手としての昆虫の関心を引くために進化を遂げたのです。「風任せ」から、他の生物に花粉を運んでもらうという大進化です。
被子植物の繁栄と恐竜の衰退
説明が長くなりましたが、ハクモクレンやコブシは、その時の形態を残していると言われ、つまりは恐竜の時代にも同じように白い花が咲いていたという事。
地球上で初めて、他の生き物たちとの「共生」という手段を選んだハクモクレンやコブシの祖先は、進化しながら世界中に勢力を拡げていきます。
それまでの裸子植物を追いやって。
恐竜の絶滅は約6500万年前。
隕石の衝突が原因というのが通説ですが、被子植物の繁殖(裸子植物の衰退)という植生の変化も一因であると言われています。
植物が他の生物と共に進化し、花の蜜、果物を実らせ、虫や鳥、動物(人類の祖先も含みます)と共に環境の変化を乗り越えたの対し、恐竜は生態系の輪から外れていったとされます。
フランス語でコブシは「Magnolia de Kobé」=神戸のマグノリア
コブシは英語では「Kobushi Magnolia(コブシ・マグノリア)」(日本語がそのまま使われています)。
フランス語では「Magnolia de Kobé」、“神戸のマグノリア”です。
命名された時(明治時代でしょうか)、既にヨーロッパでも知られた港町だったのでしょう。
100年後の神戸で
50年後、100年後の神戸の春。
震災が人々の記憶から薄れていった頃。
神戸のマグノリアが親しまれているのを想像すると、ワクワクします。
植物と人との進化の一つの形のような気がして。
マグノリアが生きてきた1億年に比べたら僕たちの時間は一瞬かも知れないけれど、認めてくれそうです。歩み始めた事を。
植物名 | ハクモクレン |
漢字名 | 白木蓮 |
別名 | ハクレン(白蓮) |
学名 | Magnolia heptapera |
英名 | Yulan magnolia |
科名・属名 | モクレン科モクレン属 |
原産地 | 中国 |
花期 | 3~4月 |
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