ヤドリギの花と実の季節(半寄生という植物の旅)

ヤドリギの花(こちらは雄花)
ヤドリギの花(こちらは雄花)。

春の伐採現場で大量のヤドリギを観察する機会がありました。

ちょうど花が咲いていて、中には実が残っている個体もあり、せっかくなので“信州の山の植物「差し上げます」”企画の一つとして、読者の皆さんにヤドリギを差し上げました。

シラカバに宿っていたヤドリギ達
採取したヤドリギたち(皆さんに差し上げました)。

そんな経緯もありながら、この記事ではヤドリギの花や実、宿る木や種類、特徴など、半寄生植物であるヤドリギについて、幅広く書いてみます。

ヤドリギとは

シラカバに宿ったヤドリギ
シラカバに宿ったヤドリギ。

ヤドリギとは、漢字で「宿り木」、他の樹木に「宿る木」です。

他の木に寄生して、養分をもらいながら生きている植物です。

木(宿主)から養分をもらいながらも、ヤドリギ自ら光合成をするので「半寄生」と呼ばれますが、そうした生態も含めて、幾何学的な枝ぶりや宝石のような実など、いろんな魅力を持った植物です。

ヤドリギの花と実の季節は冬

ヤドリギの花と実
ヤドリギの黄色い花と実。

ヤドリギの花の季節は2~4月です。

実がなるのは11月頃です。

鳥に食べられなければ、実が春まで残っている事もあって、花と実の両方が観察できる場合もあります。

花は、よく見ないとわからないくらい小さいですが、枝葉の黄緑色との組み合わせによって引き立つ黄色です(色の種類については後述します)。

花言葉は「困難に打ち克つ」

枝先の葉の間に小さな花が咲きます
枝先の葉の間に小さな花が咲きます。ヤドリギは雌雄異株で、雄花も雌花も数㎜の小さな花です。

ちなみに、ヤドリギの花言葉は 「困難に打ち克つ」 です。

ギリシャ神話が元になっており、死者を生き返らせる草としてヤドリギが登場する事から与えられた花言葉だそうです(『花は自分を誰ともくらべない』(稲垣 栄洋/山と渓谷社)より)。

黄色い花、黄色い実の日本のヤドリギ(欧米のは白い実)

ヤドリギの実
日本のヤドリギの実は黄色です。

黄色い花、黄色い実がなるヤドリギは日本の一般的なヤドリギ(種名Viscum album var. coloratum)です。

ヤドリギにも種類があって、ヨーロッパのクリスマスで使われるのはセイヨウヤドリギ(オウシュウヤドリギ:Viscum album)で、白い実をつけます。

白い実のヤドリギ
こちらは白い実のヤドリギ。

日本のヤドリギはセイヨウヤドリギの亜種という位置づけなのですね。

ちなみに、我が家はヤドリギの実を食べて(!?)植えてみました(下記記事にて紹介)。

採取したヤドリギの実

ヤドリギの種類(赤い実や、落葉するヤドリギも)

ヤドリギの種類については、セイヨウヤドリギの他、赤い実のアカミヤドリギ、落葉するタイプ・ホザキヤドリギなどもあります。

下記記事では、そんなヤドリギの種類について紹介しています。

松本城の天守の左に、ヤドリギが宿った木

ヤドリギが宿る木(ヤドリギがいる風景)

ヤドリギが宿る木(寄主)は、基本的には落葉広葉樹です。

マツグミという種類のように、常緑針葉樹にも宿るものもありますが、狭義のヤドリギとしては、落葉広葉樹に宿ります。

ヤドリギが宿る木(寄主)

エノキ、ケヤキ、ハルニレ、アカシデ、クリ、ブナ、ミズナラ、カシワ、クワ、ヤナギ類、サクラ類、ハンノキ、ウメなど

以降、信州の山間部で宿っている様子の写真をいくつか。

シラカバ×ヤドリギ

伐倒したシラカバとヤドリギ
伐倒したシラカバとヤドリギ。

信州の山間部で多く見かけるのがシラカバに宿っているヤドリギです。

白い樹皮にヤドリギの緑色が目につく、という事もあるかもしれません。

オーク×ヤドリギ

ヤドリギとオーク(ミズナラ)
オーク(ミズナラ)に宿ったヤドリギ。

ミズナラなどの「ブナ科コナラ属」とも、ヤドリギは相性が良いようです。

ミズナラは西洋の「オーク」と近縁種で、古代ケルトでは「オークに宿ったヤドリギ」が最も神聖だとされました(後述します)。

ケヤキ×ヤドリギ

ケヤキの木に宿ったヤドリギ
ケヤキの木に宿ったホザキヤドリギ

都市部でも、ケヤキに宿っているのを見かけます。

サクラ×ヤドリギ

サクラの木に宿ったヤドリギ
サクラの木に宿ったヤドリギ。

こちらはまだ若いヤドリギ。

サクラの木の枝に宿っています。

ちなみに実をつけるには5年くらいはかかるようです。

文化に見るヤドリギ

西洋でのヤドリギは縁起木

ヤドリギの葉
枝は二又または三又状に分枝します。

白い実のセイヨウヤドリギも、落葉広葉樹に宿ります。

ヨーロッパでは、古くはヤドリギが宿ったオークの木の下で儀式が行われていたそうです(ケルト神話の由来)。

オークの木は日本でいうところのナラの木(ジャパニーズオーク)です。

ヤドリギもオークも、神聖視されてきた長い歴史があります。

今でも、ヤドリギは縁起が良い木として、クリスマスに飾られたりする風習が欧米にはあります。

ご近所さんにヤドリギ、いただきました

クリスマスのヤドリギの意味

クリスマスにはヤドリギを吊るす風習があります
欧米のクリスマスは、ヤドリギを吊るす風習が。

クリスマスには「ヤドリギの下ではキスしていい」とされ、映画やアニメなどでもそんなシーンがあります。

※下記記事でハリーポッターやトイストーリーに登場するクリスマスのヤドリギの意味について紹介しています。

花芽が付いたヤドリギ

源氏物語や万葉集のヤドリギ

親木付きのヤドリギ
水を張ったバケツに親木付きのヤドリギを。

それに比べると、日本ではヤドリギは身近ではありません。

『源氏物語』に「宿り木」という章がありますが、蔦(つた)の事を指しているそうです。

万葉集にはホヨという古名で出ていますが、欧州のように儀式に使うとか、神話に登場するという存在ではなかったのでしょうね。

ヤドリギの季節と飾り方(インテリアとしてのヤドリギ)

ヤドリギの実を使ったクリスマス・スワッグ
クリスマス・スワッグ。ウラジロモミの葉にヤドリギとノイバラの実を飾り付けました。

前述したように、欧米では、クリスマスにヤドリギを飾る風習があります

常緑なので特に季節の変化はないですが、実が付く冬、樹々が落葉して色が少ない中、鮮やかな常緑のありがたみが増すという事はあるでしょう。

花瓶に生けたヤドリギ
こちらは花瓶に生けたヤドリギ。

日本のマツやサカキ等と通じるものがあるかもしれません。

信州の山奥に暮らす我が家にとっては、モミの木(ウラジロモミ)もヤドリギも身近です。

考えてみれば、我が家はケルトや北欧神話のような環境と近いのかもしれません(笑)。

※そうした、ヤドリギを飾っている様子を下記記事『ヤドリギとインテリア』で実例を紹介しています。

インテリアとしてのヤドリギ

ヤドリギの実とレンジャク、半寄生という形態

鳥の巣がヤドリギの横に
鳥の巣がヤドリギの横に。

ヤドリギの実がなる頃、冬鳥としてレンジャク(ヒレンジャクとキレンジャク)がやってきます。

信州の山間部だとキレンジャクが多いようです。

キレンジャクが実を食べて、その糞が幹や枝にくっついて(ヤドリギの種はネバネバしています)、やがて根を下ろします。

ヤドリギの実の果肉はネバネバです
ヤドリギの実の果肉はネバネバです。

そうして寄生する事でしかヤドリギは生きられず、実が地面に落ちても発芽しません。

冒頭で述べた通り、ヤドリギは自ら光合成をするので、正確には寄生ではなく「半寄生」という変わった形態ですが、いずれにせよ、宿主と鳥を必要とする、こんな“ヤドリギの旅”もなかなか面白いです。

ヤドリギの旅の季節

発送(旅立つ)準備ができた、ヤドリギたち
「差し上げます」企画で発送した(旅立った)ヤドリギたち。

レンジャクは、信州の山間部には数年に一度、大群で飛来するそうで、僕はまだ見た事がありません。

キレンジャクの写真を撮るのを楽しみに、またヤドリギの場所をチェックしておかねばなりません。

シベリアの厳しい寒さを逃れてやってくるキレンジャクにとって、信州の山奥は暖かいのでしょうか。

春が来て花が咲き、鳥たちが食べ残した実を見て、遠くへ思いをはせます。

そんなヒトの営みもまた、ヤドリギの旅を構成する一つの要素です。

植物名ヤドリギ
漢字名宿生木
別名ホヤ、ホヨ、トビヅタ
学名Viscum album var. coloratum
英名Japanese mistletoe
科名・属名ビャクダン科ヤドリギ属
原産地日本、朝鮮半島、中国など
花期2~4月

※冒頭で述べた通り、このsambuca(サンブーカ)ブログでは、“信州の山の植物「差し上げます」”企画の一つとして、読者の皆さんにヤドリギを時々、差し上げています。
最新の情報をご確認ください。

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5件のコメント

大好きな宿木ですが、私の身近では見ることがありません。宿木について色々知ることができてよかったです。ありがとうございました。

宿り木についていろいろ知ることができてとても嬉しいです☺️いつか本物をみてみたいです。

ありがとうございます☺️

先ほど、Instagramの方もフォローさせていただきました

美しいところにお住まいなんですね
癒されます

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ABOUT US
しょうじ(Shoji)
神戸出身、2016年に信州の山奥に移住。植物のある生活、自然の中での生活について、このブログ(サンブーカ)で記事を作っています。食や自転車、インテリアなど“イタリア的な山暮らし”の楽しさもテーマにしています。