春の伐倒現場で大量のヤドリギを観察する機会がありました。
ちょうど花が咲いていて、中には実が残っている個体もありました。
この記事では、ヤドリギの花や実、宿る木や種類、特徴などヤドリギについて幅広く書いてみます。
この記事の目次
ヤドリギの花と実

ヤドリギの花の季節は2~4月です。
実がなるのは11月頃です。
鳥に食べられなければ、実が春まで残っている事もあって、花と実の両方が観察できる場合もあります。
花は、よく見ないとわからないくらい小さいですが、枝葉の黄緑色との組み合わせによって引き立つ黄色です。
黄色い花、黄色い実の日本のヤドリギ

黄色い花、黄色い実がなるヤドリギは日本の一般的なヤドリギ(種名Viscum album var. coloratum)です。
ヤドリギにも種類があって、ヨーロッパのクリスマスで使われるのはセイヨウヤドリギ(オウシュウヤドリギ)で、白い実をつけます。
日本のヤドリギはセイヨウヤドリギの亜種という位置づけなのですね。
ヤドリギの種類

他のヤドリギについて、いくつか『原色樹木大図鑑』(北隆館)から抜粋します。
●アカミヤドリギ
『原色樹木大図鑑』より抜粋
学名rubro-aurantiacumは赤色を帯びた黄金色の、の意味。近似種(母種)セイヨウヤドリギは果実が白く熟す。
●ヒノキバヤドリギ
ツバキ、サザンカ、ヒサカキなどの常緑広葉樹の枝上に生える。和名は細かく分枝した緑色の茎がヒノキの葉のように見えるヤドリギの意。
●マツグミ
暖地のアカマツやモミなど常緑針葉樹の枝上に生える。和名はアカマツの枝上によく生え、果実がグミに似ているため。
ヤドリギが宿る木

マツグミのように、常緑針葉樹にも宿るものもありますが、狭義のヤドリギとしては、落葉広葉樹に宿ります。
具体的にはエノキ、ケヤキ、ハルニレ、アカシデ、クリ、ブナ、ミズナラ、カシワ、クワ、ヤナギ類、サクラ類、ハンノキ、ウメなどです。
信州の山間部で宿っている様子をいくつか。
シラカバ

信州の山中で最も多く見かけるのがシラカバに宿っているヤドリギです。
白い樹皮にヤドリギの緑色が目につく、という事もあるかもしれません。
ケヤキ

都市部でも、ケヤキに宿っているのを見かけます。
サクラ

こちらはまだ若いヤドリギ。
サクラの木の枝に宿っています。
ちなみに実をつけるには5年くらいはかかるようです。
西洋のヤドリギ、日本のヤドリギ(ケルト神話、源氏物語)

白い実のセイヨウヤドリギも、落葉広葉樹に宿ります。
ヨーロッパでは、古くはヤドリギが宿ったオークの木の下で儀式が行われていたそうです(ケルト神話の由来)。
オークの木は日本でいうところのナラの木です。
ヤドリギもオークも、神聖視されてきた長い歴史があります。
それに比べると、日本ではヤドリギは身近ではありません。
『源氏物語』に「宿り木」という章がありますが、蔦(つた)の事を指しているそうです。
ヤドリギという存在は認知されていたとしても、欧州のように儀式に使うとか、神話に登場するというものではなかったのでしょうね。
ヤドリギの季節と飾り方

欧米では、クリスマスにヤドリギを飾る風習があります。
常緑なので特に季節の変化はないですが、実が付く冬、樹々が落葉して色が少ない中、鮮やかな常緑のありがたみが増すという事はあるでしょう。
日本のマツやサカキ等と通じるものがあるかもしれません。
信州の山奥に暮らす我が家にとっては、モミの木(ウラジロモミ)もヤドリギも身近です。
考えてみれば、我が家はケルトや北欧神話のような環境と近いのかもしれません(笑)。
ヤドリギの実とキレンジャク、ヒレンジャク

ヤドリギの実がなる頃、冬鳥としてレンジャク(ヒレンジャクとキレンジャク)がやってきます。
信州の山間部だとキレンジャクが多いようです。
キレンジャクが実を食べて、その糞が幹や枝にくっついて(ヤドリギの種はネバネバしています)、やがて根を下ろします。
数年に一度、大群で飛来するそうで、僕はまだ見た事がありません。
キレンジャクの写真を撮るのを楽しみに、またヤドリギの場所をチェックしておかねばなりません。
ヤドリギの旅

シベリアの厳しい寒さを逃れてやってくるキレンジャクにとって、信州の山奥は暖かいのでしょうか。
春が来て花が咲き、鳥たちが食べ残した実を見て、遠くへ思いをはせます。
そんなヒトの営みもまた、ヤドリギの旅を構成する一つの要素です。
植物名 | ヤドリギ |
漢字名 | 宿生木 |
別名 | ホヤ、ホヨ、トビヅタ |
学名 | Viscum album var. coloratum |
英名 | Mistletoe |
科名・属名 | ビャクダン科ヤドリギ属 |
原産地 | 日本、朝鮮半島、中国など |
花期 | 2~3月 |
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